「まぶしい!」のにはワケがある

やがて、イタリアに住むうちにわかってきたのは、彼らは「暗くても平気」、それどころか「暗いほうが落ち着く」ということだった。

イタリアのわが家は狭いことから、より開放感を得るべく、窓とともに「ペルシアーナ」と呼ばれる換気ルーバー付き雨戸を開け放っていることが多い。一方、イタリア人の家は、日中でもペルシアーナも閉めてしまうので、暗い。

どうして閉めておくのかと聞くと、彼らからは「直射日光が当たると暑いから」「アンティークの家具が傷むから」のほかに「まぶしいから」と答えが返ってくる。だから、ボクの家を訪れるイタリア人の中には、まぶしいといって室内でサングラスを外さない人もいる。

あるとき知人のイタリア人眼科医に聞いてみると、「それは目の中の組織『虹彩』の違いだ」と教えてくれた。日本人の黒い目は、光の透過が少ないので、まぶしさを感じにくい。対してイタリア人も含む西洋人の目は、比較的光を通しやすく、まぶしく感じる傾向にあるのだという。

なるほど、ヨーロッパの人々が、日本人よりも暗いところを好む理由がわかった。ちなみに、こちらでクルマとオーナーの屋外撮影をするため、オーナーに日のあたるところに立ってもらうと、「早くしてくれーッ」とまぶしがられることが少なくない。あれも、虹彩の違いだったのだ。

日本では、明治時代に銀座にガス灯がともったときから明かりが文明の象徴となり、以来、明るさは文化のバロメーターとなった。そしてボクも含め日本人は子供のころから「本は明るいところで読むべし」と教えられ、明るい=目に良い=正しいという図式が頭の中に形成された。

しかし前述のような身体的な理由で、イタリアでは、適度に暗い場所のほうが心地よく感じる人が多い。
さらにいえば、直接照明よりも間接照明のほうが、デザインにかかるコストや機器のコストが高くなる=高級であるという捉え方があることも事実だ。
だから、警備上明るくしたほうがよいエコノミークラス車両とは違い、1等車など一定のクラス以上では、照明をより暗めにすることがある。

かつての筆者の仕事場。明かりといえば、壁に設置された間接照明だけだった。2010年撮影。
かつての筆者の仕事場。明かりといえば、壁に設置された間接照明だけだった。2010年撮影。 拡大
シエナ旧市街にある、4年前まで筆者が住んでいた家からの風景。昼間だというのに、ほとんどの家がペルシアーナを閉めたままである。
シエナ旧市街にある、4年前まで筆者が住んでいた家からの風景。昼間だというのに、ほとんどの家がペルシアーナを閉めたままである。 拡大
イタリアの特急車両、フレッチャロッサ。フィレンツェ駅で。
イタリアの特急車両、フレッチャロッサ。フィレンツェ駅で。 拡大
フレッチャロッサのビジネスクラスの車内。天井も窓際も、間接照明の使い方が際立つ。ガラス張りの棚にも注目。
フレッチャロッサのビジネスクラスの車内。天井も窓際も、間接照明の使い方が際立つ。ガラス張りの棚にも注目。 拡大
ミラノで現役の古い市電。天然レトロな照明が泣かせる。
ミラノで現役の古い市電。天然レトロな照明が泣かせる。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

あなたにおすすめの記事
新着記事