間接照明で光るセンス

自動車の世界でも、そうした「暗さ」感と間接照明による絶妙なセンスを見せてくれるモデルがある。近年ボクが確認した中で、最も秀逸なのは、2015年に発表された5代目「ルノー・エスパス」である。Bピラーとクオーターピラーに青白くともるルームライトは、穏やかな光を天井にも投げかける。

思いおこせば、かつての「シトロエンBX」のループランプも、間接照明ではないが、Bピラーに「ぽわーん」とともって、ほのぼのとしていた。

それらの上品なセンスの演出は、こういってはなんだが、蛍光灯がガンガンともる中で育った日本のデザイナーには思いつかないものである。こうしたデザインの提案にゴーサインを出せる経営陣がいることも事実だ。欧州の人たちの、光に対する独特のセンスがうかがえる。

照明と乗り物ついでに、もうひとつ。自動車の都イタリア・トリノの地下鉄の話をしよう。全自動運転のため、一番前と一番後ろの車両には運転室や車掌室がなく、中間の客車と比べてやや薄暗い。

だが、東京で「ゆりかもめ」に乗るときも、子供の乗客と争うようにして最前列を確保するボクとしては、トリノでも最前列を取ろうとした。
ところがそこには、写真でご覧の通り、「ここは、子供たちのための場所です」というステッカーが、ボクに対する警告のごとく貼られていたのであった。

(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>)

「ルノー・エスパス」の最高級仕様「イニシアル パリ」。パリのオルリー空港にて。
「ルノー・エスパス」の最高級仕様「イニシアル パリ」。パリのオルリー空港にて。 拡大
「ルノー・エスパス」のBピラーにともるルームライト。
「ルノー・エスパス」のBピラーにともるルームライト。 拡大
ドイツのフランクフルト・アム・マインと近郊を結ぶ車両。棚に光が入るようになっている。天井中央の照明も秀逸。こんな電車で通勤したい。
ドイツのフランクフルト・アム・マインと近郊を結ぶ車両。棚に光が入るようになっている。天井中央の照明も秀逸。こんな電車で通勤したい。 拡大
地下鉄の車内で、窓のそばに添えられた「お子さま優先」のステッカー。
地下鉄の車内で、窓のそばに添えられた「お子さま優先」のステッカー。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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