「遅いけどよく走る」

私に言わせれば、「日産GT-R」のニュルアタックなど恐るるに足らず。H.I.S.の激安チケットで渡欧した極東からの旅行者が、欧州の吉野家牛丼(並)レンタカーに3名乗車で旅行バッグもミネラルウオーターのペットボトルも一切合切搭載したまま、フツーにチケット(当時1周22ユーロ)を買ってニュルアタックを敢行することの方が、よりチャレンジングではなかろうか? というかそれを許す欧州自動車文化の懐の深さに首(こうべ)を垂れるしかない。鈴鹿サーキットはこのような蛮行を許さないだろう。

フォード・フォーカス エステート 1.6ディーゼルはかなり遅かった。特にニュルでは遅かった。マリオによれば、「僕が走った時で1周13分台の半ばくらいでした!」とのことである。しかしそれはまさに欧州の吉野家牛丼(並)だった。

フォードの1.6リッターディーゼルは、最高出力90psくらい(うろ覚え)。5段ワイドレシオを駆使して欧州を(含むニュルブルクリンク北コース)走り回ることは、ガイジン観光客が大江戸温泉で首まで漬かるような濃厚さだった。同業者がビジネスクラスに乗って海外試乗会に出向き、もろもろ完璧に準備された状態で試乗車を乗り回すのとは違う。そこにはハダカの付き合いのようなものがある。

欧州でハダカの付き合いをしたフォーカス エステート 1.6ディーゼル。私はその土着性に激しく魅了された。憧れの欧州に深く根を下ろした、あの「遅いけどよく走る」感、あの実用性、そしてアウトバーンを160km/hで巡航しても16km/リッター走った土着的経済性。それこそが今後私が真に憧れるべき対象ではないかという強い思いに駆られたのだ!

【Movie】マリオ高野によるニュルブルクリンク北コースの走行シーン

(つづく)

  (文=清水草一)

第1回:地球史3大事件(前編)

ニュルブルクリンク北コースの料金表(09年当時)。
ニュルブルクリンク北コースの料金表(09年当時)。 拡大
ニュルブルクリンク北コースの一般走行に並ぶ我らが「フォーカス」。すぐ後ろは「コルベット」。
 
ニュルブルクリンク北コースの一般走行に並ぶ我らが「フォーカス」。すぐ後ろは「コルベット」。
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「フォード・フォーカス エステート 1.6ディーゼル」、この微妙にイケてない風情が実に土着的で秀逸だった。
「フォード・フォーカス エステート 1.6ディーゼル」、この微妙にイケてない風情が実に土着的で秀逸だった。 拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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