適正であると考えています

あのとき(=25年前)、ついでだから聞いてみた。

高速道路の100km/h規制を見直すつもりはありますか、と。

警察庁の高速道路課と私のやりとりである。

高速道路の最高速度が100km/hと決められた基準は?
「基準となるのは設計速度です。制限速度を定めるに当たっては、設計速度が決定的な要素となります」

設計速度120km/hの区間であれば制限速度が100km/hを上まわる可能性はある?

「将来的に、道路構造が現在よりも格段な安全を保証するようになれば、検討、あるいは見直しの可能性はあるかもしれません。しかし、現在の最高速度100km/hという規制は適正であると考えています」

25年前、警察庁の庁舎が赤茶色の特徴的な格好をした建物だった頃、俺、こんな古い建物の廊下、夜は怖くてひとりじゃ歩けない、とか考えながら高速道路課の部屋を尋ねた日のことを思いだす。
あのとき、私の取材に応対してくれた担当者の「将来的にうんぬん」の言葉。まさに、その「将来」が、結果として2016年3月だったということなのか?

いや、そうじゃない。
ぜんぜん違う。

新東名は確かに「格段な安全を保証する道路構造」で登場したけれど、もうひとつの制限速度引き上げ予定区間、東北道の花巻南~盛岡南IC間の約31km区間の安全構造(設計速度120km/h)は25年前から変わってない。あの頃から問題の区間の安全構造はきわめて高かったのだ。

では、なにゆえ、いまになっての制限速度引き上げなのか。

その答えは、やっぱり“あれ”だと思う。

(文=矢貫隆)

東北道で制限速度の引き上げが予定されているのは赤い部分(花巻南IC~盛岡南IC間約31km)。
東北道で制限速度の引き上げが予定されているのは赤い部分(花巻南IC~盛岡南IC間約31km)。 拡大
東北道は、引き上げが予定されている区間に限らず、安全快適に走れる区間は多い。写真は松尾八幡平IC付近の風景。正面に見えるのは日本百名山のひとつ、石川啄木が「ふるさとの山に向かひて……」と歌った岩手山。(写真=NEXCO東日本)
東北道は、引き上げが予定されている区間に限らず、安全快適に走れる区間は多い。写真は松尾八幡平IC付近の風景。正面に見えるのは日本百名山のひとつ、石川啄木が「ふるさとの山に向かひて……」と歌った岩手山。(写真=NEXCO東日本) 拡大
矢貫 隆

矢貫 隆

1951年生まれ。長距離トラック運転手、タクシードライバーなど、多数の職業を経て、ノンフィクションライターに。現在『CAR GRAPHIC』誌で「矢貫 隆のニッポンジドウシャ奇譚」を連載中。『自殺―生き残りの証言』(文春文庫)、『刑場に消ゆ』(文藝春秋)、『タクシー運転手が教える秘密の京都』(文藝春秋)など、著書多数。

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