ミシュランの研究開発拠点・ラドゥを訪れる

去る9月16日、ミシュランはグローバルな研究開発拠点であるラドゥ・テクノロジー・センター、通称“ラドゥ”に新築した建物の開設式を行った。式典は、ミシュラングループのジャン-ドミニク・スナール会長や同社R&D責任者のテリー・ゲッティ氏、ラドゥの代表を務めるピエール・ロベール氏だけでなく、フランスのマニュエル・バルス首相まで出席する格式の高いもので、ヨーロッパから集まった多くの報道陣とともに私もこの席に招かれた。

式典そのものは、前述した4人のスピーチを中心とする比較的シンプルな内容だったが、このイベントにはミシュランの将来を左右しかねない重要な意味が込められていた。

その話題に移る前に、発表会の舞台となったラドゥについて紹介しておこう。

1963年にオープンしたラドゥにはテストコースが併設されており、1965年以降、タイヤ摩耗テストをはじめとするさまざまな試験がここで行われてきた。実は、現実の使用条件に近い環境で製品をテストしようと考えた世界初のタイヤメーカーはミシュランだったという。

私は以前、ラドゥの内部を取材したことがあるが、450万平行メートル(450ヘクタール)の広大な敷地内に合計で21、総延長43kmのテストコースを有しているだけでなく、タイヤと路面とサスペンションの関係を現実に近い環境で多角的に捉える試験装置が数多く用意されていることに驚かされた。

言うまでもなく、タイヤは自動車に装着されて初めて機能を発揮する。つまりタイヤと自動車は一体となってパフォーマンスを生み出すわけだが、個々の製品を開発する過程では、互いの影響を排除した状態で性能を評価・計測する必要が出てくる。さもなければ、タイヤが悪いのか、サスペンションの設定に問題があるのか、はたまたボディー剛性が低いからなのかといった原因の究明が難しくなる。

ラドゥには、タイヤとサスペンションは一体となって機能するという前提に立ちながらも、実車を使ったテストではかえって問題の本質が見えにくくなる評価試験に適した数多くの開発ツールが存在する。そうしたツールの数は400基に上り、700通りもの評価方法を確立しているというから驚くしかない。つまりミシュランは、これほど多角的な視点からタイヤを評価し、それらを製品の開発に役立てているのだ。

もうひとつ、ラドゥで興味深いのはプルービンググラウンドと開発・設計施設が一体化している点にある。タイヤメーカーの多くは、テストコースはテストコース、開発・設計は開発・設計でそれぞれ別の施設を設けているが、これでは迅速な技術開発が難しい。ところがラドゥにはテストコースと開発・設計施設が同居しているだけでなく、ここに試作部門、評価部隊、シミュレーションといった機能までひとつの敷地内に設けられている。言い換えれば、ラドゥだけでタイヤ開発を完結させることもできるのだ。

実はミシュランは世界中の3つの大陸に25の研究開発施設を持ち(そのうちのひとつは群馬県太田市にある)、6600人のスタッフが年間800億円ほどを投じて研究開発に取り組んでいるのだが、そうしたグローバルな開発のおよそ70%はラドゥで行われているというから、その重要性は明らかだろう。

「RDIキャンパス」の開所式にはフランスのマニュエル・バルス首相が出席した。(写真=大谷達也)
「RDIキャンパス」の開所式にはフランスのマニュエル・バルス首相が出席した。(写真=大谷達也) 拡大
「RDIキャンパス」建設の目的は、これまでもミシュランの強みであった各部署の連携をさらに強化し、さらなる効率化を図ることにある。
「RDIキャンパス」建設の目的は、これまでもミシュランの強みであった各部署の連携をさらに強化し、さらなる効率化を図ることにある。 拡大
ラドゥ内にあるテストコース。コースの総延長は43kmにおよぶ。
ラドゥ内にあるテストコース。コースの総延長は43kmにおよぶ。 拡大
ラドゥ・テクノロジー・センターは、クレルモンフェランのミシュラン本社から北へ10kmの場所にある。
ラドゥ・テクノロジー・センターは、クレルモンフェランのミシュラン本社から北へ10kmの場所にある。 拡大
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