マメな顧客対応はカナメ

「これも持ってって、持ってって」。フランチェスコ氏は、まだ封を切ったばかりの段ボール箱から、インクの香り漂うフィアット版、アバルト版双方の124スパイダーカタログを渡そうとした。

それが販売店負担であることを知っているボクとしては、悪いので辞退しようとしたが、気のいい彼はそれでも「持ってけ」という。

東京時代、小学生の分際でディーラーをめぐってカタログ集めをしていたボクとしては、簡易版である「リーフレット」ではなく、ちゃんとしたカタログをもらえると、今でも妙にありがたい気持ちになる。

やがてフラチェスコ氏は、「じゃ、ちょっと失礼するよ」と言って、電話をかけはじめた。「先日は、対応まで大変お待たせしました」などと話している。電話を切ったあと教えてくれたところによると、先週末の来店客への電話であった。

FCAのマニュアルにより、イタリアのセールスは来店から3日以内に、連絡先を残してくれたお客さんあてにフォローアップのコールをするのだという。
近年のイタリアでは、輸入プレミアムブランドで導入されている手法だが、FCAでも実施されていたとは。

124スパイダーのような華やかなモデルを放ち、昔ながらの陽気な対応をする一方で、地道なセールスもこなしているのであった。

(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>)

カタログ棚の脇に立てられた、「アバルト124スパイダー」の性能をアピールするPOP。
カタログ棚の脇に立てられた、「アバルト124スパイダー」の性能をアピールするPOP。 拡大
熟練セールスマンのフランチェスコ・タッデオさん。仕事用パソコンで旧型「500」のマウスを愛用。後方には、「フィアット2300」など1960年代の広報写真パネルが。
熟練セールスマンのフランチェスコ・タッデオさん。仕事用パソコンで旧型「500」のマウスを愛用。後方には、「フィアット2300」など1960年代の広報写真パネルが。 拡大
「アバルト124スパイダー」のイタリア国内価格は、MT仕様が4万ユーロ(およそ460万円)、AT仕様が4万2000ユーロ(およそ480万円)。円換算すると日本国内価格より高くなるのは、22%という付加価値税の影響によるところが大きいだろう。
「アバルト124スパイダー」のイタリア国内価格は、MT仕様が4万ユーロ(およそ460万円)、AT仕様が4万2000ユーロ(およそ480万円)。円換算すると日本国内価格より高くなるのは、22%という付加価値税の影響によるところが大きいだろう。 拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

あなたにおすすめの記事
新着記事