ジョスパン元首相の母がモデル

マドレーヌの衰えは隠しようもない。腰を痛めて身動きがとれなくなり、キッチンでボヤ騒ぎを起こしてしまう。なんとか助けられたものの、入院を余儀なくされる。点滴や酸素吸入の装置を取り付けられ、尊厳を傷つけられた姿にディアーヌは衝撃を受ける。病院で死ぬのはイヤだという母の願いを受け入れ、腰の調子がよくなると外に連れ出した。

「太りそうなものを食べたい!」というリクエストに応え、キャビアを用意した。とても合いそうにない種類のワインが供されていたが、母子は久しぶりに心からの笑顔を交わす。幸福の記憶の中で命を終えたいという母の気持ちを、娘は自分のこととして感じることができた。

この物語は、実話にもとづいている。マドレーヌのモデルとなったのは、ミレイユ・ジョスパン。リオネル・ジョスパン元首相の母である。首相の妹で作家・哲学者のノエル・シャトレが書いた『最期の教え』が原作となっている。映画では家族構成などの設定が変更されているが、ジョスパン家で尊厳死をめぐる葛藤があったのは事実なのだ。

母には娘にも明かさなかった秘密があった。最期を迎える前に会わなければならない人がいる。ディアーヌは母を助手席に乗せ、ドライブに出掛けることにした。彼女は普段「フィアット500C」に乗っているが、今回はルノー5で出掛ける。母が苦楽をともにしてきたクルマなのだ。旅を終え、ずっと整備を請け負ってくれていた工場にクルマをあずける。愛車が天寿をまっとうするのを見届け、マドレーヌも幸福な生涯に幕を下ろす準備が整った。

(鈴木真人)
 

(C)2015 FIDELITE FILMS - WILD BUNCH - FRANCE 2 CINEMA - FANTAISIE FILMS
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「ルノー5」
1961年から販売されていた「ルノー4」をベースにして、個人ユースの若者をターゲットに開発されたのがルノー5。1972年にデビューし、シャープな面で構成されたハッチバックスタイルが世界中で人気となった。ミドに強力なエンジンを搭載したWRC用ホモロゲーションモデルの「5ターボ」も作られている。
「ルノー5」
	1961年から販売されていた「ルノー4」をベースにして、個人ユースの若者をターゲットに開発されたのがルノー5。1972年にデビューし、シャープな面で構成されたハッチバックスタイルが世界中で人気となった。ミドに強力なエンジンを搭載したWRC用ホモロゲーションモデルの「5ターボ」も作られている。 拡大
『92歳のパリジェンヌ』
2016年10月29日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
配給:ギャガ
『92歳のパリジェンヌ』
	2016年10月29日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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