原作はジョージ朝倉の少女マンガ

原作はジョージ朝倉が『別冊フレンド』に連載していた作品で、山戸監督が「世界で最も好きなマンガ」である。だから初めて原作ものを撮ろうと思ったのだ。10年にわたって連載されて単行本は全17巻という長さだから、111分の映画にまとめるのは大変な作業だっただろう。しかし、監督は「『溺れるナイフ』に関して、その中で描かれている感情でわからないものは一つもなかったので、どう凝縮するかということだけでした」と語っている。

原作は小学生から30代までの長い物語だが、映画で描かれるのは中学から高校までの期間だ。15歳の夏芽(小松)は、家庭の事情で東京から実家の旅館のある浮雲町に引っ越す。モデルとなっているのは和歌山県の熊野あたりで、ロケも当地で行われている。田舎で暮らすことに納得していない彼女は不機嫌を隠さない。家から逃げ出して浜辺に向かい、立ち入り禁止の札が立てられている入り江に近づいた。

夕暮れの海の上に、あおむけになって漂っている少年を見つける。コウ(菅田)との運命的な出会いだった。夏芽はコウの中に神を見た。禁域を無視して結界の海にも怖じることのない彼は、特別な人なのだ。「この町のモンは、全部俺の好きにしてええんじゃ」という彼の言葉を、夏芽は素直に受け入れる。

コウは神主の跡取り息子であり、勝手な振る舞いが許されていた。東京でモデルの仕事をしていた夏芽も、学校では目立つ存在となる。クラスメートの大友(重岡)やカナ(上白石)は、2人がつき合うことを願うようになった。

©ジョージ朝倉/講談社 ©2016「溺れるナイフ」製作委員会
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第134回:伝説の女性監督が熊野を舞台に少女を描く『溺れるナイフ』の画像 拡大
 
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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