銀幕の名車がズラリ

2016年10月に開催されたパリモーターショーでは、会期中に「自動車と映画」と題した特別展が催された。パビリオンまるごとひとつを充て、これまで映画やテレビに登場した車両49台を展示したものだった。さらに、クルマが登場する名場面を楽しめるよう、「探偵・刑事物」「SF」といった形で、テーマごとのブースにスクリーンと座席も用意するという粋な計らいもあった。シートはもちろん映画館用だ。

「探偵・刑事物」の部に展示された2008年型「アストンマーティンDBS」は、『007 慰めの報酬』の劇中車である。映画の中でドアがもぎ取られたままである。ちなみに筆者が住むイタリア・シエナはロケ地のひとつだったことから、撮影シーンを市内でたびたび目撃したものだ。同じイタリアでも北部のロケでは、同型車が撮影中に勢い余って湖に転落するというハプニングもあったのを覚えている。

ちょっと変わり種のボンドカーもあった。1985年「ルノー11タクシー」は、『007 美しき獲物たち』でロジャー・ムーア演じるボンドが、ルーフを飛ばし、真っ二つになりながらもセーヌ河沿いを激走するシーンを見せたものである。

「コメディー」の部に展示された1964年「シトロエンDS」(1965年の『ファントマス爆発』に登場)には、翼が付いている。「羽根つきギョーザ」ならぬ「羽根つきDS」である。主人公の怪盗ファントマスが、これに乗って空へと逃亡する。フランスでは往年の名作DVDの類いとして売られていることが多いので、シトロエンファンの方はネットで探してみるといいかもしれない。

「もしや日本車も?」と思って探してみると、あったあった。「カーチェイス」の部に置かれた1994年「トヨタ・スープラ」だ。2009年の映画『ワイルド・スピード MAX』の劇中車である。

撮影用照明であでやかに浮かび上がったクルマたちを前に、一般公開日の来場者の多くは、昔デートで楽しんだ映画音楽を心の中で口ずさんでいたに違いない。

パリモーターショー2016の特別展「自動車と映画」では、スクリーンの名場面集を鑑賞できるよう、各コーナーに映画館用のシートを設けるという粋な計らいも。
パリモーターショー2016の特別展「自動車と映画」では、スクリーンの名場面集を鑑賞できるよう、各コーナーに映画館用のシートを設けるという粋な計らいも。拡大
「コメディー」の部で見られた、『ルイ・ド・フュネスの大結婚』(1968年映画)の劇中車「ルノー・エスタフェット」。ルノー所蔵。フュネス演じる憲兵シリーズも、往年の代表的なフランス娯楽映画である。
「コメディー」の部で見られた、『ルイ・ド・フュネスの大結婚』(1968年映画)の劇中車「ルノー・エスタフェット」。ルノー所蔵。フュネス演じる憲兵シリーズも、往年の代表的なフランス娯楽映画である。拡大
同じく「コメディー」の部に展示された、『ファントマス爆発』(1965年)の劇中車「シトロエンDS」(1964年)。
同じく「コメディー」の部に展示された、『ファントマス爆発』(1965年)の劇中車「シトロエンDS」(1964年)。拡大
日本車もあり。1994年「トヨタ・スープラ」は、『ワイルド・スピード MAX  』(2009年)で活躍。
日本車もあり。1994年「トヨタ・スープラ」は、『ワイルド・スピード MAX  』(2009年)で活躍。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

あなたにおすすめの記事
新着記事