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「プジョー2008 GTライン」を知る 試す

バカンスの国が育んだSUV 2016.12.22 プジョー2008の魅力と実力<PR> 櫻井 健一 成長を続けるコンパクトSUV市場において、高い評価を得ている「プジョー2008」。フランスのメーカーが造るとクロスオーバーはどんなクルマになるか? デザインや走り、ユーティリティーなど、さまざまな切り口からその魅力を紹介する。

パワーユニットの刷新で商品力を強化

当初搭載されていた82psの1.2リッター直3自然吸気エンジンとロボタイズド5段MTを、同じ1.2リッターながらエンジンをターボ付きとし、同時にトランスミッションを6段ATに積み替えた特別仕様車「2008クロスシティ」が登場したのは2016年3月。コンパクトなボディーに110psをマークするエンジンと6段ATの組み合わせは、イタフラ好きのみならず欧州B~Cセグメントを狙うユーザーからの評価も高く、販売の現場であるディーラーからは「ぜひとも通常モデルとしてラインナップしてほしい」との声が多く寄せられたという。

そうした評判に後押しされるように、上述のパワートレインがカタログモデルとして正式採用されたのが同年9月。それと同時に追加設定された新グレードがこの「2008 GTライン」だ。クロスオーバーモデルはキャラがハンパで売れないといわれていたのはもはや過去の話で、今や日本だけでなく、世界の主要マーケットで注目されている。特にコンパクトサイズのクロスオーバーは日本でも需要があり、それこそ軽自動車からハイブリッド車まで、気がつけば人気のカテゴリーに成長したという印象がある。

人気の理由はいくつかあろうが、まずはコンパクトカー最大の特徴である運転しやすく取り回しのしやすいボディーサイズと、そしてそこにスポーティーでアクティブなイメージを適度に付加した点が魅力として挙げられるはずだ。私事で恐縮ながら、自分自身もまんまとその術中にはまっており、次期愛車はB~Cセグメントのハッチバックかクロスオーバー系モデルが筆頭候補。ということで今回はユーザー目線でクルマを紹介してしまう点をあらかじめご了承いただきたい(と、この際開き直って宣言させてもらう)。

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欧州で2013年の春に発売された「プジョー2008」。今回試乗したマイナーチェンジモデルは、2016年のジュネーブショーでお披露目され、同年9月に日本に導入された。
欧州で2013年の春に発売された「プジョー2008」。今回試乗したマイナーチェンジモデルは、2016年のジュネーブショーでお披露目され、同年9月に日本に導入された。拡大
マイナーチェンジで一新されたフロントマスク。ブラックのフロントグリルが新グレード「GTライン」の特徴である。
マイナーチェンジで一新されたフロントマスク。ブラックのフロントグリルが新グレード「GTライン」の特徴である。拡大
センターコンソールに配置されたレバー式のシフトセレクター。マイナーチェンジにより、エンジンとトランスミッションは特別仕様車「2008クロスシティ」と同じ1.2リッター直噴ターボとトルコン式6段ATの組み合わせとなった。
センターコンソールに配置されたレバー式のシフトセレクター。マイナーチェンジにより、エンジンとトランスミッションは特別仕様車「2008クロスシティ」と同じ1.2リッター直噴ターボとトルコン式6段ATの組み合わせとなった。拡大

取り回しのしやすさに高い走破性をプラス

「2008 GTライン」の車高を上げたそのアピアランスは、スタイリッシュなフォルムやディテールを持つ反面、ちょっとした道具感もあり、機能美にあふれている。ボディーは全長×全幅×全高=4160×1740×1570mmと、街中でもオフロードでも扱いやすいサイズ。ルーフレールも備わっているため例えばBセグメントコンパクトの「208」と比べると車高は100mm上がっているが、最低地上高の差は25mmである。この数値は少ないと思われるかもしれないが、雪道や林道を走ったことのある方ならご理解いただけるだろう。25mmが意外とバカにできないアドバンテージになるのである。

コンパクトなボディーに対して大きめといえる17インチのホイールや、それを覆うブラックアウトされたフェンダーアーチ、ルーフレールや前後バンパーに付くアンダーガードなど、エクステリアには本物感が満載だ。前後のオーバーハングはほどほどに短く、機動性も期待できる。このクルマのディメンションは、実際に乗り入れるかどうかは別にしても、その辺のオフロードや雪道にためらいなく乗り入れられる走破性を意識させ、行動半径の拡大をイメージさせる。私を含めたオトコの性(さが)で、脳内では勝手に荒涼とした大地(気分的にはスコットランドあたり)をひた走っている。

そんな妄想アクティビティーはともかく、実際にはオンロードユースが大半であっても、とかくオトコは冒険や野性が感じられるタフなデザインや装備にそそられてしまうのだ。もちろん、女性が乗っていればそれはそれで、フェミニンな魅力にアウトドア風味のワイルドなギャップが刺激的。「山の女性は魅力が3割増し」という先達(せんだつ)の言い伝えに痛く納得するのである。

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「2008」のボディーサイズは4160×1740×1570mm、最小回転半径は5.5mとなっている。
「2008」のボディーサイズは4160×1740×1570mm、最小回転半径は5.5mとなっている。拡大
シートはファブリックとテップレザー(合成皮革)のコンビタイプ。黒い表皮に赤いステッチの組み合わせが目を引く。
シートはファブリックとテップレザー(合成皮革)のコンビタイプ。黒い表皮に赤いステッチの組み合わせが目を引く。拡大
リアシートは6:4の分割可倒式。肩口のレバーでロックを外し、ワンアクションで背もたれを倒すことができる。
リアシートは6:4の分割可倒式。肩口のレバーでロックを外し、ワンアクションで背もたれを倒すことができる。拡大

デザインを通じて安全性を高める

話を「2008 GTライン」に戻せば、新しいプジョーを印象づける都会的な洗練されたフロントフェイスと、力強いフットワークを感じさせる足まわりのギャップ、パワーアップしたエンジンと6段AT、さらには「アクティブシティブレーキ」を標準装備としながら300万円を切る価格設定が、このクルマの注目すべきポイントである。

そしてそれらに加え、0次安全性(スバルの回し者などでは決してないが、適切な表現が見つからないのであえて分かりやすく0次安全性と表現する)がしっかり担保されているのも魅力のひとつだ。例えば、フロントウィンドウに近いドライビングポジションは前方視界の確保に寄与し、ドアミラーの位置やAピラーの太さ、フロントサイドウィンドウの形状が、運転席から左右を見回したときの視界の良さにつながっている。

振り返ればDピラーはいささか太めだが(外から見ればこれがSUVとして力強さを表現しているともいえるのだが)、その手前のリアクオーターガラスによって斜め後方の死角は最低限で済んでいる。過去のプジョーとは異なり、今やワイパーは右ハンドル専用にデザインされ、視界を妨げる雨天時の拭き残しも少ない。もちろん、リアワイパーも標準装備されている。メーターを見やすいダッシュボード上部に配置した「i-Cockpit」と呼ばれる独特のインパネデザインも、安全性の向上に役立っているといえそうだ。クロスオーバーやSUVらしくデザインすると同時に、このクルマにおいては基本性能として重要な視界の確保がないがしろにされていない点を、愛車候補としてはまずは大きく評価したいのだ。

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「2008」には約5~30km/hの車速域で作動する自動緊急ブレーキシステム「アクティブシティブレーキ」が標準装備される。
「2008」には約5~30km/hの車速域で作動する自動緊急ブレーキシステム「アクティブシティブレーキ」が標準装備される。拡大
今回試乗した「2008 GTライン」のインテリア。各部に施された赤いアクセントや、アルミペダルなどが「アリュール」との違いとなっている。
今回試乗した「2008 GTライン」のインテリア。各部に施された赤いアクセントや、アルミペダルなどが「アリュール」との違いとなっている。拡大
「i-Cockpit」とは、小径ステアリングホイールの上からメーターを視認するインターフェイスのレイアウトを貴重とした、インストゥルメントパネルまわりのデザインのこと。必要な情報を素早くドライバーに伝えるとともに、直感的な操作を可能にしているという。
「i-Cockpit」とは、小径ステアリングホイールの上からメーターを視認するインターフェイスのレイアウトを貴重とした、インストゥルメントパネルまわりのデザインのこと。必要な情報を素早くドライバーに伝えるとともに、直感的な操作を可能にしているという。拡大

シーンに応じて最適な走行モードを選択

注目ポイントの一つである1.2リッターの直列3気筒エンジンは、2年連続で「インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー」を受賞した定評あるパワーユニットだ。ターボによって最高出力は110ps、最大トルクは20.9kgmへと向上。「2008 GTライン」の持つ1.2tの車重をストレスなく走らせる。新しく組み合わせられた6段ATとのマッチングも良好だ。ワインディングロードでは軽快そのもので、ついシフトパドルが欲しくなるほどのスポーティーな走りを実感する。

「208」と比較して最低地上高が25mm高い設定にもかかわらず安定感あるハンドリングと快適な乗り心地は、プジョーというブランドに対する期待を裏切らない。オフロードでの走破性を狙ったこの車高が、ハンドリングやアジリティーに悪影響は及ぼしていないと判断できる。

それらと同時に、前輪駆動ながらオフロードでの走破性が高いのも「2008 GTライン」で取り上げるべき注目ポイントである。走破性を向上させた秘密は2つ。ひとつは駆動輪のトルクとブレーキをコントロールする電子デバイス、プジョー自慢の「グリップコントロール」を備えること。そしてもうひとつは、グッドイヤーのオールシーズンタイヤ「ベクター4シーズンズ」を標準装着としたことだ。

グリップコントロールは、トラクションコントロールとブレーキを車両側が自動的に制御し、滑りやすい路面での走りを支援する電子デバイスで、「3008」で初めて導入された定評あるシステムだ。ESC(エレクトリック・スタビリティー・コントロール)のオン/オフと、スノー(雪道)/マッド(ぬかるみ)/サンド(砂地)の合計5つの走行モードを備える。

スコットランドの荒涼とした山道とまではいかないが、富士の裾野のオフロードに足を踏み入れてみても、オンロードで感じた接地感や安定感ある良好な乗り心地に変化はない。キャンプ場までのアプローチや、ガレ場では25mmのアドバンテージを、そして人里離れた林道では大いに頼りになるグリップの良いフットワークを実感する。そしてここでも、ステアリング操作に反応するプジョーらしいリニアなハンドリングが生きていると分かるはずだ。

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富士山麓のワインディングロードを行く「2008 GTライン」。
富士山麓のワインディングロードを行く「2008 GTライン」。拡大
「2008」に搭載される1.2リッター直3直噴ターボエンジン。1.2tの車体をスポーティーに走らせるパワーと、17.3km/リッター(JC08モード)という燃費を両立している。
「2008」に搭載される1.2リッター直3直噴ターボエンジン。1.2tの車体をスポーティーに走らせるパワーと、17.3km/リッター(JC08モード)という燃費を両立している。拡大
センターコンソールに備わる、ダイヤル式の「グリップコントロール」のコントローラー。イラスト付きで、ひと目で適切な走行モードを選ぶことができる。
センターコンソールに備わる、ダイヤル式の「グリップコントロール」のコントローラー。イラスト付きで、ひと目で適切な走行モードを選ぶことができる。拡大
ラフロードでも安定した走りを見せる「2008 GTライン」。なお「グリップコントロール」が装備されるのは「GTライン」のみで、「アリュール」には備わらない。
ラフロードでも安定した走りを見せる「2008 GTライン」。なお「グリップコントロール」が装備されるのは「GTライン」のみで、「アリュール」には備わらない。拡大

タイヤ選択に見るプジョーの“見識”

さらに、そうした走りをサポートするのが、「2008 GTライン」に標準装着されているオールシーズンタイヤである。オールシーズンタイヤとは、その名のとおり季節や路面状況を問わず、クルマが走る道であれば天候や気温を選ばず安定した走行が行えるマルチパーパスな製品。アクティビティーの足にふさわしい行動半径の広さやシチュエーションを選ばない使い勝手がウリのクロスオーバー系には、まさにぴったりのタイヤなのだ。

まったくの偶然だが、個人的にも現在の愛車(ドイツ製Cセグハッチバックモデル)にグッドイヤーのベクター4シーズンズを履かせているので、そのマルチな性能を人一倍理解しているつもりだ。このタイヤにはM+S(マッド&スノー)表記とは別に、欧州で冬用タイヤとして認証されるスノーフレークマークの表示がついている。おととしに都内で何度か見舞われた大雪の際はもちろんのこと、趣味のスキードライブの際にもスタッドレスタイヤと変わらない雪上性能をここ数年の日常で確認済みだ。なんとなれば、次の愛車にも導入しようと思っていたほど首都圏で使う実用車にはこのタイヤがピッタリだと考えている。また冬場でも交換がいらないオールシーズンタイヤは、コストパフォーマンスにも優れている。冬用タイヤの保管場所にも困らないし、交換の手間暇がないのも魅力だ。

本来クロスオーバーモデル、しかも車高が高いオフロードテイスト満点のモデルであれば、脊髄反射的に四輪駆動が欲しくなるが、シティーユースメインならウェイトや燃費の面で二輪駆動にアドバンテージがあるのも確か。「2008 GTライン」は四輪駆動こそ採用していないが、グリップコントロールとオールシーズンタイヤの標準採用でそのビハインドをカバーしている。

四駆と同等とはもちろん言わないが、「2008 GTライン」にいかにしてクロスオーバーらしいポテンシャルを与えるかを考え、その答えをふたつの装備で導き出したプジョーの開発チームはなかなかの賢者だ。スポーツカーやエコカーでは当たり前になっているが、最終的に路面とのコンタクトを行うタイヤの重要性を、プジョーはどのカテゴリーにおいても十二分に理解しているのだ。

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駆動方式はFFだが、前後オーバーハングの短さや高められた車高により、多少の悪路もゆとりを持って走破できる。
駆動方式はFFだが、前後オーバーハングの短さや高められた車高により、多少の悪路もゆとりを持って走破できる。拡大
「2008 GTライン」に装備されるオールシーズンタイヤの「グッドイヤー・ベクター4シーズンズ」。サマータイヤに遜色のないドライ性能、ウエット性能と、多少の雪であれば走破できる雪上性能を併せ持つ。
「2008 GTライン」に装備されるオールシーズンタイヤの「グッドイヤー・ベクター4シーズンズ」。サマータイヤに遜色のないドライ性能、ウエット性能と、多少の雪であれば走破できる雪上性能を併せ持つ。拡大
SUVといえども、ほとんどのユーザーにとってはデイリーユースで走る道はオンロードである。燃費性能をかんがみると、必ずしも四輪駆動がベストな駆動方式とはいえない。
SUVといえども、ほとんどのユーザーにとってはデイリーユースで走る道はオンロードである。燃費性能をかんがみると、必ずしも四輪駆動がベストな駆動方式とはいえない。拡大
テールゲートを飾る、プジョーのエンブレム。
テールゲートを飾る、プジョーのエンブレム。拡大

“お国柄”がクルマを育てる

バンパーレベルから開くハッチゲートや、ワンアクションで荷室が拡大しフラットになる60:40の分割可倒式リアシートなど、使い勝手も十分に考慮されている。通常使用時は360リッター、最大で1172リッターのラゲッジスペースはこのコンパクトなボディーサイズを考えれば十分な容量。趣味のスキーやスノーボードも余裕を持ってのみ込んでくれそうだ。

スタイリングの大切さは承知しているつもりなので、少しだけ高い車高とそれっぽいデコレーションでクロスオーバーやSUVを名乗るモデルを頭から否定はしないが、そこに機能がなければ、オトコの、そしてもちろん女性にとっても、こだわりの道具とはいえない。「2008 GTライン」のスタイリッシュなデザインに対してこうした言い方は多少違和感が伴うかもしれないが、このクルマの持つ力強さやタフで本物志向の装備を持つ道具感は、そのボディーサイズとともになかなか絶妙なのだ。

小さいながらもスタイリッシュで実用的、そして走るステージを選ばないとくれば、あとは何が必要だろうか。冒頭で宣言した次期愛車を検討するドイツ車ユーザー目線の評価がどうなったかだが、今回の試乗により、5台と定めた最終候補の1台にこの「2008 GTライン」が残ったことを正直に報告する。しかし依然として「プジョー308アリュール」のBLUE HDiも筆頭候補である。最近のプジョーはどうしてこうもクルマ好きをうまく刺激するのだろう。このクルマもまた、世界でいち早くサマーバケーションを定着させた、人生を楽しむすべを知るフランス生まれらしいモデルである。乗ってみればことは文化の違いだったと再度気づかないワケにはいかない。

(文=櫻井健一/写真=郡大二郎)

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ディテールに見る凝ったデザインも「2008」の魅力。写真はライオンのツメを思わせる3連灯のLEDリアコンビランプ。
ディテールに見る凝ったデザインも「2008」の魅力。写真はライオンのツメを思わせる3連灯のLEDリアコンビランプ。拡大

ラゲッジルームの容量は、後席を起こした状態で360リッター。後席の背もたれを倒すと、床面のフラットな1172リッターの積載スペースが得られる。(写真をクリックするとシートを倒す様子が見られます)


	ラゲッジルームの容量は、後席を起こした状態で360リッター。後席の背もたれを倒すと、床面のフラットな1172リッターの積載スペースが得られる。(写真をクリックするとシートを倒す様子が見られます)
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「2008 GTライン」に用意されるボディーカラーは全5色。テスト車には「ビアンカ・ホワイト」が用いられていた。
「2008 GTライン」に用意されるボディーカラーは全5色。テスト車には「ビアンカ・ホワイト」が用いられていた。拡大

車両データ

プジョー2008 GTライン

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4160×1740×1570mm
ホイールベース:2540mm
車重:1230kg
駆動方式:FF
エンジン:1.2リッター直3 DOHC 12バルブ ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:110ps(81kW)/5500rpm
最大トルク:20.9kgm(205Nm)/1500rpm
タイヤ:(前)205/50R17 89V/(後)205/50R17 89V(グッドイヤー・ベクター4シーズンズ)
燃費:17.3km/リッター(JC08モード)
価格:285万円

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プジョー2008 GTライン
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