ボルボ愛を捨てる裏切り者

ルネが選挙に立候補し、オーヴェは地区会長の座を追われることになる。怒りのあまり、彼は「9000CS」を購入した。ルネも早速「960」を買って対抗する。対立は決定的なものとなったが、いつまでもケンカしているのは大人げない。オーヴェは仲直りを持ちかける。しかし、「新車を見せるよ」と言って彼がガレージから出したクルマを見たオーヴェは激おこ。ボルボ乗りを貫くなら話のしようもあるが、裏切りは許せない。

ルネの後に地区会長になった男は「アウディ」に乗っているし、妻の教え子は「ルノー」を欲しがっている。隣に越してきた男は「ヒュンダイ」ユーザーだ。サーブ原理主義者のオーヴェは、どんどん偏屈になっていく。

こんなふうに書くとクルマがテーマのように見えるが、それでは映画にならない。オーヴェが厄介者のジジイになったのは理由がある。もともと純粋な男なのだ。真面目に働き、普通の生活を営もうとしたのに、彼には背負いきれないほどの不幸が降りかかる。最愛の妻を亡くし、43年務めた鉄道局から突然リストラされる。同情すべき身の上なのだ。サーブ愛を貫くいちずな男の頑固さが、最後に隣人を苦境から救うことになる。

本来ならば1作品だけを取り上げるのだが、ちょうど対になるような映画があるので紹介することにする。偏屈ババアが主人公の『ミス・シェパードをお手本に』というイギリス映画だ。

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第137回:サーブvsボルボ――頑固ジジイの仁義なき戦い『幸せなひとりぼっち』の画像拡大
『幸せなひとりぼっち』
2016年12月17日(土)新宿シネマカリテ&ヒューマントラストシネマ渋谷他順次公開!
配給・宣伝:アンプラグド
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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