商売は消費者調査から

一方で、近づいてきたところで危険ではない人物もいる。「買い物カートの自主回収」だ。

日本でも一部で見られるが、こちらの買い物カートは、1ユーロコインもしくは2ユーロコインを差し込むと、つながれていたチェーンが外れて使えるようになる。クルマに購入した商品を積んだあと、差し込んだコインを回収すべく、カートを所定の置き場に戻してもらうための手段だ。

「買い物カート回収男」は大抵アフリカ系の人で、お客に代わってカートを戻しておくかわり、差し込んであるコインをチップとしてもらうことを狙っている。ボク自身は頼んだことはないが、見ているとお年寄りなどは彼らに頼んでいるときがある。

別のアフリカ系の人も近づいてくる。商品を携えた行商だ。つわものになると、乗ってきたボロボロの「オペル・コルサ」あたりのフロントフードを陳列台代わりにして、駐車場で商品を並べていたりする。見れば商品は、ベルト、スカーフ、サングラス、そしてミサンガなどで、品質は推して知るべしだ。しかしいずれもスーパーで売っていなかったり、ショッピングモールでつい買い忘れたりするアイテムゆえ、意外にもイタリア人の関心を引きつける。

鼻水が出てしまう冬の間は、バラ売りのポケットティッシュも人気商品である。スーパーではダース単位のパック売りがほとんどだからだ。ダイハツやトヨタのレベルに遠く及ばずとも、行商もそれなりにマーケットリサーチをしているとみえる。

(文=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>、トヨタ自動車、webCG/編集=関 顕也)

欧州では、スーパーマーケットのカートは、コインを入れて、ほかのカートもしくは係留ポールから固定チェーンを切り離す方式がほとんど。
欧州では、スーパーマーケットのカートは、コインを入れて、ほかのカートもしくは係留ポールから固定チェーンを切り離す方式がほとんど。拡大
2016年12月、とあるスーパーでのひとこま。カートで買い物を終えた客がクルマに戻るや、さりげなく近づいてくるのが“買い物カート回収男”(写真中央)。
2016年12月、とあるスーパーでのひとこま。カートで買い物を終えた客がクルマに戻るや、さりげなく近づいてくるのが“買い物カート回収男”(写真中央)。拡大
イタリアの行商はアフリカ系が多い。彼らが出没するのは、スーパーやショッピングモールの駐車場だけではない。夏は海岸まで、サングラスや帽子を売りにくる。
イタリアの行商はアフリカ系が多い。彼らが出没するのは、スーパーやショッピングモールの駐車場だけではない。夏は海岸まで、サングラスや帽子を売りにくる。拡大
スーパーマーケットの駐車場には行商のトラックも。これはテラコッタつぼ売り。
スーパーマーケットの駐車場には行商のトラックも。これはテラコッタつぼ売り。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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