トレーラーは秘密基地

いったん始めたことは、最後までやり通すことに決まっている。ウルフはジグソーパズルのピースが1つ見つからないだけで暴れだすような子供だった。訓練によって感情を抑えられるようにはなっていたが、冷静ではいられない。いつものようにF-150で帰宅するが、心の乱れからシャッターを開けるタイミングがずれてしまう。上がりきる前にガレージに到着し、急ブレーキをかけなければならなくなる始末だ。

イラつく気持ちを静めようと顧客の老夫婦が暮らす農場を訪れるが、「フォード・トーラス」でやってきた男たちに襲撃される。何者かがウルフ抹殺を命じていたのだ。警察も動いていた。闇社会相手に荒稼ぎしている会計士を放置しておくわけにはいかない。ウルフは窮地に立たされる。

彼は反撃態勢を整えるため、もう一つの家に向かった。超高級大型トレーラーの「エアストリーム・パンアメリカ」である。全長は10mほどで、キッチンやシャワールームも付いた動く別荘だ。クロゼットには同じ服が何着も並び、隠し部屋は武器庫になっている。彼の几帳面さが現れた秘密基地で、敵地に乗り込む準備が完了した。

ヒーローが完全無欠だったのはいつのことだろう。ジェームズ・ボンドだって最近は心の傷を抱えていたりする。『アベンジャーズ』は仲間同士でいがみ合ってばかりだ。ウルフも素直に感情移入できる正義の味方ではないし、差別される側でもある。難しいキャラクターだが、ベン・アフレックが見事にリアリティーのある人物を作り上げた。

この作品には恋愛要素がゼロだ。女性は登場するものの、ウルフはハグさえ拒否する体質だから何も起こらない。彼は真性のD.T.である。リア充ヒーローの時代は終わったのだ。

(鈴木真人)
 

©2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
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第139回:F-150で通勤する会計士は腕利きの殺し屋だった!?『ザ・コンサルタント』の画像拡大
 
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『ザ・コンサルタント』
2017年1月21日(土)より丸の内ピカデリー・新宿ピカデリーほか全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
『ザ・コンサルタント』
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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