任務遂行を前に砂漠へ

敵もバカではないから、無条件で信用することはない。隣人たちも監視要員であり、怪しいところがあれば密告しようと目を光らせている。彼の地ではベッドで愛を確かめあった後は夫だけが外で眠る習慣があるそうで、マックスは1人で屋上に出てくる。恋しさのあまり追ってきたという風情で登場したマリアンヌとラブラブぶりを見せつけるのだ。

与えられたミッションは、ドイツ大使の暗殺である。まずはパーティーに招待されることが第一の関門となる。マックスはカナダ人だからフランス語が話せるが、どうやらケベックなまりがあるらしい。パリ暮らしという設定にリアリティーを持たせるには、都会の話法を身につける必要がある。マリアンヌから特訓を受けても、真面目一本のやぼ天は洗練された会話には慣れていない。

面談で意地悪な質問をされてもなんとかこなし、パーティーに出席できることになった。スパイとしてはいい仕事をしたわけだが、命がけの任務である。大使暗殺に成功しても、生きて帰れる可能性は限りなく低い。2人は一緒に砂漠に出掛け、雄大な自然を眺めながら安らぎのひとときを楽しんだ。これがこの世の見納めになるかもしれない。

もう思いを隠す必要はなくなった。愛国者として命を捨てる覚悟はできているが、決行を前にしてこれまで抑えてきた感情を爆発させる。2人はついに結ばれるのだ。カサブランカの宿に戻るなんて悠長なことはしていられない。ほとばしる激情のままに互いに求め会う。しかし、ここは砂漠の真ん中だ。車内が愛のステージとなる。

(c)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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第140回:前輪駆動車で砂漠から生還する愛の力!『マリアンヌ』の画像拡大
 
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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