ポルノの隆盛と排ガス規制が背景

マーチは人探しの依頼を受けて調査を開始した。ポルノ女優のミスティ・マウンテンズが自動車事故で死亡し、真相のカギを握るアメリアという女性を見つけるよう頼まれたのだ。彼の前に強そうなガチムチのオヤジが現れる。示談屋のジャクソン・ヒーリーだ。殴って黙らせるという古典的な手法を使い、腕力頼りの単純明快な仕事をする。乱暴で粗野な男をラッセル・クロウが演じると説得力が増す。

ヒーリーはマーチのアメリア探しをやめさせる仕事を請け負っていた。へっぴり腰の軟弱探偵は抵抗するすべもない。コテンパンにやられてしまうが、ヒーリーが戻ってきて一緒にアメリア探しをすることになる。この映画は、いわゆるバディームービーなのだ。まったく波長の合わない2人が、いがみ合いながら協力して事件を解決していくというタイプの作品である。『リーサル・ウェポン』『ビバリーヒルズ・コップ』『ミッドナイト・ラン』など、このジャンルは名作の宝庫だ。

舞台となるのは、1977年のロサンゼルス。物語はこの時代に大きな問題となっていた2つの出来事を背景にしている。ポルノ産業がメジャーになり、自動車の排ガスによる公害が政治課題となっていた。アメリアはポルノ女優と関わりを持ち、公害に反対する運動にも参加している。この時代のインテリ女子大生にありがちだった行動パターンである。

アメリアの失踪には、政府を巻き込んだ陰謀が関係しているらしい。排ガス規制をめぐる裏取引が絡んでいるのだ。裏で糸を引いているのはビッグスリーである。1970年に提起されたマスキー法はCO、HC、NOxの排出に厳しい規制をかける内容で、自動車会社は対応に苦慮していた。ホンダのCVCCエンジンなどで日本のメーカーは基準クリアのメドをつけていたが、アメリカの自動車業界はロビー活動で徹底抗戦するしかない。

(c)2016 NICE GUYS, LLC
(c)2016 NICE GUYS, LLC拡大
 
第141回:メルセデスに乗る探偵がビッグスリーの陰謀に挑む『ナイスガイズ!』の画像拡大
 
第141回:メルセデスに乗る探偵がビッグスリーの陰謀に挑む『ナイスガイズ!』の画像拡大
 
第141回:メルセデスに乗る探偵がビッグスリーの陰謀に挑む『ナイスガイズ!』の画像拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

あなたにおすすめの記事
新着記事