最後の対決はLAオートショーで

クライマックスの舞台は、LAオートショーである。アトランタのヒルトンホテルで撮影されたのだが、当時の資料映像も挿入されている。大排気量エンジンと豪華装備を誇るモデルだけでなく、時代を反映してエコなコンセプトカーの展示もあった。「3人乗り電気自動車」として紹介されるのは「AMCコンセプト・エレクトロン」。1967年に登場した「アミトロン」の改良型で、ニッケルカドミウムとリチウムニッケルのツインバッテリーを搭載していた。

最高速度は80km/h、最大航続距離は240kmとされる。回生ブレーキを備える当時最新のテクノロジーが装備されていた。ただし、ショーのステージに上げられたのは、パワートレインを持たないドンガラだったらしい。今だってガソリン自動車の代わりにはなり得ていないのだから、70年代の電気自動車は実用化にはほど遠いレベルだった。

環境技術で日本に大きく後れを取っていたビッグスリーは焦っていた。真っ向から勝負しても勝てそうにない。排ガス規制法を阻止するために陰謀を企てたという設定にはリアリティーがある。現実の歴史でも、マスキー法は骨抜きにされてしまった。1975年からCOとHC、1976年からNOxを90%削減しなければならないと定められていたが、1973年に環境保護庁が実施延期を決定する。前年には却下されていた案件だが、ビッグスリーが連邦控訴裁判所に提訴し、全米科学アカデミーの支援を受けて逆転に成功したのだ。

すべてが終わった後、マーチは「どうせ5年後には日本製の電気自動車が流行するのさ」とこぼす。この言葉は、半分当たっている。電気自動車ではないが、環境性能を高めた日本車はまたたく間にアメリカのマーケットを席巻した。40年後にビッグスリーがどうなったかをわれわれは知っている。

この映画は激動の時代を迎えていた世界の自動車産業と環境問題に光を当てた社会派の作品……というわけではない。ダメかわいいライアン・ゴズリングとクマさん体形のラッセル・クロウがイチャイチャするのに萌えるのが正しい鑑賞姿勢だ。ホリー役のアンガーリー・ライスのキュートさも100点。ちょっと水原希子に似ている彼女の今後が楽しみである。

(鈴木真人)

(c)2016 NICE GUYS, LLC
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第141回:メルセデスに乗る探偵がビッグスリーの陰謀に挑む『ナイスガイズ!』の画像拡大
 
第141回:メルセデスに乗る探偵がビッグスリーの陰謀に挑む『ナイスガイズ!』の画像拡大
『ナイスガイズ!』
2017年2月18日、新宿バルト9ほか全国ロードショー
配給:クロックワークス
『ナイスガイズ!』
	2017年2月18日、新宿バルト9ほか全国ロードショー
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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