あの『タイム』誌までもが酷評

そうした「知りすぎた男」ならぬ「知りすぎた子供」にとって、もう一台、ひそかに好きだったモデルがある。「アストンマーティン・ラゴンダ シリーズ2」だ。

1976年のロンドンモーターショーで発表され、1978年に発売されたそれは、最高出力300hpを発生する5.3リッターV8エンジンに、クライスラー製のトルクフライト3段ATを組み合わせていた。

デザイナーのウィリアム・タウンズによるスタイルは、名門ブランドの4ドアセダンでありながら極めて未来的で、小学生のボクを魅了するに十分だったのである。しかし、前述のGT以上に、それは同級生にとっては未知の存在だった。

悲しいことに、筆者が大人になってからも、このラゴンダ シリーズ2はトラディショナルな雰囲気を好む純粋英国車ファンからも異端視されていた。近年も『タイム』誌が選んだ「歴代ワーストカー50台」にしっかりとランキングされている。

前述のポルシェ928に関しては、2013年の映画『スティーブ・ジョブズ』で、若き日の彼が足として使っているシーンがあり、「ほれ見ろ。わかっているやつはわかっているんだ」と留飲が下がった。だが、さすがにラゴンダは、かのジョブズでさえ乗ることはなかったようだ。

1981年製の「アストンマーティン・ラゴンダ」。長いノーズが目立つこともあり、この角度から眺めるとトランクはほとんど目に入らず。ファストバックと錯覚してしまう。写真は、カーオークションでのもの。
1981年製の「アストンマーティン・ラゴンダ」。長いノーズが目立つこともあり、この角度から眺めるとトランクはほとんど目に入らず。ファストバックと錯覚してしまう。写真は、カーオークションでのもの。拡大
「ラゴンダ」のダッシュボード。ステアリングホイールは「シトロエンCX」などと同じ1本スポークだが、センターパッドの厚みは「ローバーSD1」を思わせる。
「ラゴンダ」のダッシュボード。ステアリングホイールは「シトロエンCX」などと同じ1本スポークだが、センターパッドの厚みは「ローバーSD1」を思わせる。拡大
ステアリングコラムの両サイドには、フラットなパネルが。その上に各種の操作ボタンが並ぶ。
ステアリングコラムの両サイドには、フラットなパネルが。その上に各種の操作ボタンが並ぶ。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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