日本の道では余力がありすぎる

サスペンションには可変制御ダンパーが装着されており、「シーンに合わせて最適な状態に減衰力を調整してくれる」(ジャガー・ランドローバー・ジャパン担当者談)とのことだが、今回の試乗では、Fタイプはどの場面でもゴリゴリのスポーツカー・ライドを保ち続けた。きっと、このクルマでいう「最適な状態」とは、「持てるパフォーマンスを即座に発揮するための、最適な状態」ということなのだろう。

一方で、普通に走らせている限りはエンジンはいたって静か。始動時のひと吼(ぼ)えを聞いて、「公道を走れるシロモノではないんじゃないの?」と恐れをなしていたのだが、実際にはそんなことは一切なかった。高速道路での合流や追い越しも、乗員に「フーン」と鼻息を聞かせるだけで、軽くこなしてしまう。1回だけ、料金所ダッシュでアクセルを踏みつけたときには豪快なサウンドと暴力的な加速を披露したが、本気で吼えたのはその時だけ。モードスイッチでわざと爆音にしてやらない限りは、このエンジンはとても紳士的だ。

恐らく、日本の道路事情では余力がありすぎるのだ。高速道路でも峠道でも、すべてを“鼻息モード”でこなしてしまう。そんなことだから、ひとつ下……というか上から2番目の「R AWD」との間にも、大きな違いを感じることはなかった。なにせ、550psと575ps、69.3kgmと71.4kgmの差でしかなく、そんなものを試そうと思ったら、デカいサーキットにでも持ち込むしかない。
しかるべき場所でこそ本領を発揮し、普段はそのための佇(たたず)まいとドライブフィールで、ドライバーにそのときを夢想させる。最新の高性能モデルに共通するマナーである。

サービスエリアでの撮影を済ませたら、そのままクルマを返す予定だったのだが、ちょっと気が変わり、箱根まで足を伸ばすことにした。
荒れた路面を踏みしだきながら、デカいエンジンにモノをいわせてグイグイ走る気持ちよさは、アングロサクソン系スポーツカーの特権だ。記者のような小心者が、法定速度内で走っていても十分に楽しい。しかし、いざ目的地にたどり着き、クルマから降りてその姿を振り返ると、やっぱり気後れしてしまう。普段着でここまで運転してきてしまったことが、申し訳なく思われる。

やはり、ジャガーFタイプSVRはドライバーの器量を試すクルマである。その辺について自信があるという方は、ぜひ一度、己を試してみては? 

(文と写真=webCG ほった)
 

リアの足まわりについては、より軽量なナックルや37%剛性を高めた大型のベアリングなどが採用されている。
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最高出力575ps、最大トルク71.4kgmを発生する過給機付き5リッターV8エンジン。カバー無しのむき出しのエンジンヘッドに、凄(すご)みを感じる。
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カーボン製のリアウイングをはじめ、「SVR」にはボディーの各所に専用の空力パーツが施されている。
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「FタイプSVR」の動力性能は、0-100km/h加速が3.7秒、最高速がクーペで322km/h、コンバーチブルで314km/hと公称されている。
「FタイプSVR」の動力性能は、0-100km/h加速が3.7秒、最高速がクーペで322km/h、コンバーチブルで314km/hと公称されている。拡大
リアバンパーに装着された「SVR」のバッジ。
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