Eタイプのおかげで女性と親密に

免色は4台のクルマを所有している。すべて英国車だ。「クラシックMINI」と「レンジローバー」がガレージに収まっているらしいが、彼が乗るシーンはない。彼は「銀色のジャガーのスポーツ・クーペ」で「私」の家にやってくる。モデル名は示されないが、あとで4.2リッターV8エンジンを搭載していることが明かされるので、おそらく初代「XK」だろう。

シートがコノリー社のものではないという記述があり、2002年以降のモデルということになる。2007年に2代目に切り替わるから、この物語は2002年から2006年の間の出来事だと判断していい。最後のほうで2011年3月に保育園に通う娘が登場する。2004年生まれだと小学生になっているはずだから、2005年か2006年のどちらかに絞られる。

免色はもう1台ジャガーを所有している。「Eタイプ」のロードスターだ。彼はこのクルマのおかげで、美しい女性と親密な関係になる。彼女が乗っているのは明るいブルーの「トヨタ・プリウス」だが、父の愛車だった「ジャガーXJ6」を懐かしく思い出すのだ。

小説の中ではプリウスがあまりいい扱いを受けていない。「自動車というよりは巨大な真空掃除機のように見えた」とまで書かれている。彼女が着飾ってきた時は、「トヨタ・プリウスのハンドルを握るにはいささかファッショナブルに過ぎるような気がする」と主人公に言わせている。「トヨタの広報担当者は私とはまったく違う意見を持つかもしれない」とフォローしてはいたけれど。

天田政彦のクルマは「ボルボ・ワゴン」とだけ書いてある。色は黒で「旧型の、真四角で実直頑強な」「トナカイの死体を運ぶには便利そう」などという言わずもがなの記述もある。でも、説明してあるだけマシだと思ったほうがいいだろう。「私」が交際している人妻が乗っているBMWの「MINI」は、色が赤である以外の情報はない。

「ジャガーEタイプ」
もとは「Dタイプ」の後継レーシングカーとして開発されていたモデルだったが、ロードカーとして1961年のジュネーブショーに登場したのがEタイプ。ロングノーズのスポーティーで流麗なデザインが高い評価を得た。シリーズ2、シリーズ3と発展し、1975年まで販売された。
「ジャガーEタイプ」
	もとは「Dタイプ」の後継レーシングカーとして開発されていたモデルだったが、ロードカーとして1961年のジュネーブショーに登場したのがEタイプ。ロングノーズのスポーティーで流麗なデザインが高い評価を得た。シリーズ2、シリーズ3と発展し、1975年まで販売された。拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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