凡庸がダメとは限らない

接客にあたっては、試乗を積極的に勧めているという。このあたりは、イタリアのトヨタ販売店におけるプリウスと同じだ。近年上昇傾向にあるものの、まだ普及途上のAT車の運転法レクチャーから始まる。

「いざ走り始めると、パワーの伝達状態がリアルタイムにモニターに映し出されることに、試乗したすべてのお客さまが感激します」とうれしそうに教えてくれた。

社長室を出てショールームを見渡すと、ヒュンダイのSUVでやって来た夫婦が興味深げに展示中のアイオニックを見学していた。

そのあとボクも見せてもらう。かつてインタビューしたイタリア人醸造学者が「雑然としたワイン見本市では、プロでも本当の味はわからない」と言っていたが、クルマの場合も、慌ただしいモーターショーよりも販売店でじっくり見たほうがわかることがある。

例えば、空力性能向上のためか、極度に傾斜したAピラーは、それなりにドライバーに圧迫感を与える。内装デザインも、空調吹き出し口こそ“環境カラー”であるブルーメタリックで塗られているものの、新しいクルマに乗っているという興奮は乏しい。プラスチック類の表面処理も凡庸である。

2016年のジュネーブモーターショーで同車に乗り込んだときは、2代目プリウスを思い出したが、“グローブボックスのふたの頼りない閉まり方”の思い出となると、1990年代中頃のフィアットにまでさかのぼる。

しかし、外国人が勝手に想像するより何倍も保守的なイタリア人にとって、アイオニックのエクステリア/インテリアデザインは、極めてアバンギャルドな最新のプリウスに比べて理解に時間がかからないことはたしかなのだ。

カタログもしかり。アイオニックはメカニズムについての解説を最低限にとどめていて、これでもかと言わんばかりに機能解説満載のプリウスよりも、受けがいいかもしれない。

「積極的に試乗を勧めています」と語る、ヒュンダイ販売店のマッシモ社長。
「積極的に試乗を勧めています」と語る、ヒュンダイ販売店のマッシモ社長。拡大
後席はルーミーである。タクシー需要をあてにしないというが、十分対応できる広さだ。
後席はルーミーである。タクシー需要をあてにしないというが、十分対応できる広さだ。拡大
ラゲッジスペースの容量は5人乗車時で443リッター。後席を倒せば1505リッターにまで拡大できる。
ラゲッジスペースの容量は5人乗車時で443リッター。後席を倒せば1505リッターにまで拡大できる。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など数々の著書・訳書あり。

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