目指すは“ヒュンダイスタ”創生

先ほどまで接客していた営業のチェーザレさんに話を聞く。

現在のところ、この県にはエコカー減税や奨励金は存在しないが、「2017年の3月末まで2250ユーロ(約27万円)のディスカウントをしますよ」という。

ちなみに2017年3月現在、トヨタもプリウスで同様のセールを行っている。前述の2万9250ユーロを、4000ユーロ(約48万円) 引きの2万5250ユーロで販売するのだ。このディスカウント合戦が起こったのも、アイオニック参入のためかもしれない。

「アイオニックの納期は最大2カ月。3つあるグレードのうち中間の『コンフォート』で、ボディーカラーがホワイトならば、もっと早いです」とチェーザレさん。

なお、彼がアイオニックを売ったお客さんのひとりは、学校の先生だったという。先にマッシモ社長が話したのと同様「環境意識が高い人が中心になってゆくと思われます」とチェーザレさんは分析する。

ところで、北米でヒュンダイといえば「トヨタ・カムリ」の好敵手であるDセグメントの「ソナタ」が看板車種である。一方イタリアでヒュンダイといえば、近年でこそSUVのイメージが強くなってきたものの、依然1リッターもしくは1.2リッターのシティーカー「i10」の印象も残る。

また、「ヤリス」(日本名:「ヴイッツ」)や目下話題の「C-HR」を含めると、トヨタのハイブリッド車の販売台数は、ヒュンダイのそれを軽く凌駕(りょうが)する。出だし好調のアイオニックが、その勢いを維持できるかどうかは未知数だ。

成否は、環境意識が高い“アーリーアダプター”に行き渡ったあとも引き続きユーザー層を開拓できるかどうかに掛かっているだろう。ちなみにイタリアで「ホンダ・インサイト」は、ここで壁にぶち当たってしまった。 

アイオニックがそこを突破して、いまだ聞かない「ヒュンダイスタ」(ヒュンダイのファン)とでもいうべき層を作りだせれば、これまた面白い展開になりそうだ。

(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=関 顕也)

グレーの「アイオニック ハイブリッド」を前に、「IONIQ」のロゴ入りセーターで気合が入る営業のチェーザレさん(写真左)。隣に立つのは、同僚のジョヴァンニさん。
グレーの「アイオニック ハイブリッド」を前に、「IONIQ」のロゴ入りセーターで気合が入る営業のチェーザレさん(写真左)。隣に立つのは、同僚のジョヴァンニさん。拡大
「スーペルアウト」からは、ダンテ・アリギエーリが「地獄編」で詠んだモンテリッジョーニ城塞(じょうさい)を見渡すことができる。
「スーペルアウト」からは、ダンテ・アリギエーリが「地獄編」で詠んだモンテリッジョーニ城塞(じょうさい)を見渡すことができる。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など数々の著書・訳書あり。

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