「ビートル」は伊・仏で“違う虫”

一方フランスでは、大衆車「ルノー4(キャトル)」を「4L」と呼ぶ。カタカナで書けば「キャトレール」といったところだ。この由来は少々ややこしい。1960年代初頭に一瞬だけ存在した廉価版「R3」とノーマルの4に加えられたデラックス(リュクス)版の名前が4Lで、それが4全体を指す言葉として残ってしまったのである。

クルマのニックネームについても触れてみよう。

フォルクスワーゲンの初代「ビートル」は、日本では「かぶと虫」の愛称で親しまれた。イタリアでも「maggiolino(マッジョリーノ)=かぶと虫」である。ところが、フランスでは「coccinelle(コクシネル)=てんとう虫」なのだ。ちなみに、現行型「ザ・ビートル」の伊・仏仕様には、それぞれの国の愛称バッジが貼られている。

「プジョー404」は1960年から1981年まで21年の長きにわたって製造され、特にその堅牢(けんろう)さで知られた。セダン生産終了後も1980年代末まで生産が続けられたピックアップトラック版は、フランスでは「Bachee(バシェー)」と呼ばれている。バシェーとは「幌(ほろ)をかぶせた」という意味だ。

多くの404トラックが幌を備えていたことから命名されたものである。この愛称、フランスのみならず、チュニジアといったフランス語圏マグレブ諸国の、それも普通の人々にまで行き渡っているから驚く。

「ルノー4(キャトル)」は、本場で「4L(キャトレール)」と呼ばれている。
「ルノー4(キャトル)」は、本場で「4L(キャトレール)」と呼ばれている。拡大
「フォルクスワーゲン・ビートル」の愛称は、イタリア語とフランス語とで意味が違う。これは、わが街シエナで見つけた大胆なグラフィックの「ニュービートル」。
「フォルクスワーゲン・ビートル」の愛称は、イタリア語とフランス語とで意味が違う。これは、わが街シエナで見つけた大胆なグラフィックの「ニュービートル」。拡大
「バシェー(幌をかぶせた)」といえば、かなりの確率で「プジョー404」。1996年、チュニジアで撮影。
「バシェー(幌をかぶせた)」といえば、かなりの確率で「プジョー404」。1996年、チュニジアで撮影。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

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