倫理意識のない自動運転

ウルヴァリンはローラを連れてカナダに脱出しようとする。彼らを追ってくるのは、子供を使ってミュータントの実験を行っていた研究所が放った刺客だ。リムジンに乗って逃げようとするが、ホイールベースの長いクルマは小回りがきかずカーチェイスには向かない。SUVに乗り換えて北へと向かったのは賢明な判断である。

追っ手の側も、トラックやSUVばかりだ。「ダッジ・ラム」や「フォード・スーパーデューティー」などが激走する。砂漠を走ることもあるので、4WDなのはありがたい。それはいいのだが、音を聞く限りボンネットの下には内燃機関が収められているようだ。2029年というのは今から12年後なのだが、まだまだEVは主流になっていないらしい。1970年代のものとおぼしき「フォード・ブロンコ」まで走っていたから、旧車趣味の人もしばらくは安心である。

ウルヴァリンも追っ手も自分でステアリングを握っていたから、自動運転もまだ普及していない。ただ、陸上輸送に関しては事情が違う。運転席を持たないコンテナだけのトラックが、コンボイを組んで走っていた。音が静かだったから、EVかFCVの可能性もある。流通を担う商用車から先進技術を装備するというのは、十分にあり得る想定だ。

問題は、この自動運転が倫理的なプログラミングになっていないことだ。道の前方に人影を発見しても、クラクションを鳴らすだけで減速するそぶりも見せずに全速力で突っ走る。効率を優先するならばこれが最適解なのだろうが、現実の自動運転は人命優先の設定にしてほしい。

映画では希望の持てる未来図も描かれていた。ウルヴァリンが一度メキシコに向かったとき、国境をスムーズに通ったのだ。壁は築かれていない。たぶん、トランプは早期に失脚したのだろう。

(文=鈴木真人)

(C)2017Twentieth Century Fox Film Corporation
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「ダッジ・ラム」
1981年に登場したクライスラーのフルサイズピックアップトラック。かつては「バイパー」と同じV10エンジンを搭載するモデルもあった。映画では第4世代の現行モデルが使われている。
「ダッジ・ラム」
	1981年に登場したクライスラーのフルサイズピックアップトラック。かつては「バイパー」と同じV10エンジンを搭載するモデルもあった。映画では第4世代の現行モデルが使われている。拡大
『LOGAN/ローガン』
2017年6月1日(木)全国ロードショー
20世紀フォックス映画配給
『LOGAN/ローガン』
	2017年6月1日(木)全国ロードショー
	20世紀フォックス映画配給拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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