レクサスLC500“Sパッケージ”(FR/10AT)
スーパースポーツかくあるべし 2017.06.19 試乗記 「レクサスの変革を象徴するモデル」として開発された、新型ラグジュアリークーペ「LC500」に試乗。意欲的なデザインや新たなメカニズムは、ドライバーの心をどう満たすのか。さまざまな道で吟味した。パワートレインが宝
あでやかな深紅のレクサスLC500“Sパッケージ”に乗り込み、スターターボタンを押すと、轟音一閃(ごうおんいっせん)、5リッターのV8が目を覚ます。まずはレクサス独特の電子音がしているはずだけれど、記憶に残っていない。エンジンがかかってから電子音がするのか、それとも通電して電子音がしてからエンジンがかかったのか……いまも記憶にあるのは、94.0×89.5mmのシリンダー8本内の爆発によって奏でられるリアルなサウンド、「天使の咆哮(ほうこう)」だけだ。
レクサス最新の、そして自然吸気としては最後になるやもしれぬ大排気量マルチシリンダーこそがLC500の主役である。型式名2UR-GSE。最高出力477ps/7100rpm、最大トルク540Nm/4800rpmというこれは、スペックが示すごとく、排気量に似合わぬほどの高回転型ユニットである。でありながら、大排気量ならではのぶ厚い低速トルクを備えている。
LC500で特徴的なことは、主役を主役たらしめるために、あるいは主役をより際立たせるために、強力な脇役が配されていることだ。相棒といってもいいかもしれない。アイシンが新たに開発した10段オートマチックトランスミッションがそれである。
当初、LC500開発陣のトップは10段までは望んでいなかった。コストがかかりすぎることを嫌ったのだ。でき上がった10段ATと2UR-GSEとの組み合わせは、しかしコスト管理者の気持ちをひっくり返すものだった。そんな逸話を横浜で開かれたLCの試乗会の折、トランスミッションの担当者から聞いた。10段でありながら、従来の8段ATと変わらぬコンパクトネスと重量にとどまっているということも、彼らが成し遂げたことのひとつだった。
10段化によってハイギアード化も可能になった。100km/h巡航はわずか1300rpm近辺に過ぎぬ。静かで快適なクルーザー、それがLC500の誰にでもわかる普段の顔だ。
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