固定ボルトが異常に多いエンジン

この6気筒エンジンには、プリンスの母体である中島飛行機で誉エンジンを設計した中川良一が関わっている。シビアな飛行機の世界で培った技術が盛り込まれているのだ。オーバークオリティーといわれるほど余裕を持った設計で、高い耐久性を持っていた。理想を追求するあまり重量は増えてしまったが、市販車で160馬力だった最高出力は、カムシャフトやキャブレターを交換するだけで200馬力をオーバーするポテンシャルを秘めていた。最高出力を発生するのは市販車で7000rpm、レースでは9000rpmまで回しても壊れなかったという。

固定ボルトが異常に多いことも特徴となっている。通常のヘッドボルトに加え、S20にはブロックを貫通して締め付けるスタッドボルトがあった。L20に比べると、約2倍の本数である。クランクシャフトの固定にも、上下だけでなく左右からのボルトを使った。ブロックの剛性を高めるために、通常では考えられない方法が採用されたのだ。

突出していたのはパワーユニットだけではない。足まわりには、日産が「ローレル」や「ブルーバード」で試みた、前:ストラット、後:セミトレーリングアームというBMWスタイルのサスペンション形式を採用した。フロントにディスクブレーキを使い、トランスミッションはポルシェタイプの5段である。至るところに、考え得る最高のテクノロジーが注ぎ込まれていた。

GT-Rは当然のように即座にレースに投入された。1969年5月3日のJAFグランプリTSレースがデビュー戦である。辛勝ではあったが勝利をおさめ、ここから破竹の連勝が始まった。同年10月10日の日本グランプリ前座レースでは、1位から8位までを独占する強さを見せている。ソレックスのキャブレターに代えてルーカス製インジェクションが与えられており、250馬力を超えるパワーを絞り出していたようだ。

1970年代に入ると、高橋国光のドライブでさらに強さを発揮するようになる。立ちはだかったのは、マツダの送り込んだロータリーエンジン搭載マシンだ。1970年5月3日のJAFグランプリTSレースに「ファミリア ロータリークーペ」が現れ、GT-R対ロータリーの対決が始まった。この大会では熟成を深めていたGT-Rがワンツーフィニッシュでファミリアを退け、その後も連勝記録を伸ばした。

「S20」型2リッター直列6気筒DOHCエンジン。
「S20」型2リッター直列6気筒DOHCエンジン。拡大
「GT-R」のデビュー戦となった1969年のJAFグランプリの様子。39号車をドライブする篠原孝道が優勝を果たし、これが記念すべきGT-Rの初勝利となった。
「GT-R」のデビュー戦となった1969年のJAFグランプリの様子。39号車をドライブする篠原孝道が優勝を果たし、これが記念すべきGT-Rの初勝利となった。拡大
1969年の日本グランプリにて、富士スピードウェイを走る「スカイライン2000GT-R」。
1969年の日本グランプリにて、富士スピードウェイを走る「スカイライン2000GT-R」。拡大
1970年のJAFグランプリにて、高橋国光の「スカイライン2000GT-R」と「マツダ・ファミリア ロータリークーペ」。
1970年のJAFグランプリにて、高橋国光の「スカイライン2000GT-R」と「マツダ・ファミリア ロータリークーペ」。拡大
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