ランボルギーニ・アヴェンタドールSクーペ(4WD/7AT)
いかに「S」といえども…… 2017.07.26 試乗記 さらなるパワーと洗練を得て「ランボルギーニ・アヴェンタドール」が「アヴェンタドールS」に進化した。その実力を試す舞台に選ばれたのは鈴鹿サーキットだったが、ご覧のとおりの悪天候。このコンディションだと、いかに「S」といえども……。![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
740psに4WSと話題満載だが……
ランボルギーニのフラッグシップといえば、もちろんV型12気筒エンジン搭載車。すなわち、いかに「ウラカン」がよくできていようと、たとえニュルブルクリンクでは向こうの方がラップタイムに優れていようと、“ランボルギーニの顔”は、現在はアヴェンタドールであるということだ。
そんなフラッグシップランボの中にあっても最も先進的、かつ特別な存在が、自ら「アヴェンタドールの次世代モデルであり、12気筒ランボルギーニの新たなベンチマークになる存在」と紹介するアヴェンタドールS。
エアロダイナミクスを徹底して再チューニングしたボディーに、このブランドとしては初となる4WSシステムを採用。専用チューニングが施された6.5リッター自然吸気ユニットは、実に740psという最高出力を8400rpmという超高回転で発生……と、このあたりのスペックを目にしただけで、スーパーを超えたそのウルトラスポーツカーぶりがうかがい知れるというものだ。
かくして、そんなデビュー間もないモンスターに触れることができるというまたとないチャンスが到来するはずだったのだが……。
それなりに長い間を生きていると、「これはもう、何とも慈悲のないことで……」と、思わずため息をつきたくなる場面にも遭遇する。ちょうど1年ぶりに開催された鈴鹿サーキットでのランボルギーニ試乗会は、まさにそんな天を仰ぎたくなる展開となってしまった。
何となればイベント当日の、しかもまさに本コースで走行が行われるという午前中に限って、ピンポイントで狙われたかのような“暴風雨”。実際、「うわっ、これじゃ“災害レベル”じゃない……」という尋常ならざるその状況に、帰路は新幹線が不通になるというオマケまで付いてしまったほどだ。
というわけでそんな当日の、しかも最もコンディションが悪い朝一番の枠のみという“一発勝負”で乗ることになってしまったアヴェンタドールSの印象は、正直なところ「怖くて、危ない以外はよく分からなかった」と言うしかないものだった。
さしもの4WDシャシーが生み出す優れたトラクション能力も、コースのそこら中を横切る“深い川”の前には無力も同然。むしろ“4輪ホイールスピン”ともなれば2WDモデル以上に始末が悪いがゆえ、アクセルワークは慎重の上にも慎重にならざるを得なかった。
そもそも、DCTより大幅に軽いという理由から「これぞ最良」というフレーズとともに採用されたシングルクラッチ式の2ペダルMTが生み出すシフトショックは、それそのものがスピンモードへと陥るきっかけを作ってくれそうな気配がいっぱい。これもまた、背後のV12ユニットが雄たけびを上げる以前に、アクセルペダルを戻すという不本意に終始せざるを得ない大きな理由になってしまった。
「ホイールベースを500mmのマイナスから700mmのプラスまで変化させるのと同等の効果を持つ」とスタート前にレクチャーをされた売り物の4WSシステムも、とてもその効果を実感するには至らず。とにかく、当日のドライビングは「何もしないことこそが最善」と、そう判断せざるを得ない状況であったことを察してほしい。
……と、そんなこんなでこれはもう、もう一度“リベンジ”をしないことには収まらない。近い将来に、必ず再度のドライビングにトライする! と、今回はそんな誓いをもって筆を置かせていただくことにする。
(文=河村康彦/写真=池之平昌信/編集=竹下元太郎)
![]() |
【スペック】
全長×全幅×全高=4797×2030×1136mm/ホイールベース=2700mm/車重=1575kg(乾燥重量)/駆動方式=4WD/エンジン=6.5リッターV12 DOHC 48バルブ(740ps/8400rpm、690Nm/5500rpm)/トランスミッション=7AT/燃費=16.9リッター/100km(約5.9km/リッター 欧州複合モード)/価格=4490万4433円