カーチェイスのために4WDをFRに改造

ニコラス・ウィンディング・レフンの『ドライヴ』でライアン・ゴズリングが演じたのもゲッタウェイドライバーだった。街の道を知り尽くしている彼は、警察の動きを読んで巧みにルートを選ぶ。追いつ追われつのシーンはほとんどなく、静かな緊張感がみなぎる美しい映像は斬新だった。『ベイビー・ドライバー』は異なるアプローチをとるが、これも革新的なカーチェイスシーンである。

アクション映画の映像はどんどん派手になってきていて、数十台、数百台のクルマが一度にクラッシュするシーンがスクリーンに映し出されることもある。大規模な爆発が起きて迫力満点だが、しばらくすると飽きてしまうのも事実だ。今の観客は、それがリアルなクルマではないことを知っている。何十人ものスタッフがコンピューターの中でクルマを衝突させているのだと思うと、過重労働に苦しむ彼らが気の毒になるだけだ。

『ベイビー・ドライバー』では、グリーンバックもワイヤーもほとんど使われていない。リアルなカースタントにこだわったのだ。だから、カーチェイスで使われるクルマは、本当に高い性能を備えていなければならない。銀行強盗にとっての高い実用性を持つクルマをセレクトしたのである。アクション製作チームの高い要求をクリアしたのがWRXなのだ。

「スバルWRXは操作性のよさで知られているクルマ。俊敏で柔軟なんだ。一番早く現場から逃げるためにはこういうクルマが必要だよ」
スタントコーディネーターのダリン・プレスコットはそう話している。180度ターンを華麗にキメることのできる操縦性能が何よりも大切だった。WRXは4台用意されていて、その中にはわざわざ4WD機構を解除してFRに仕立てたものもある。スピンターンや交差点でのドリフトなど、シーンに合わせて最適な動きを実現できるモデルに改造したのだ。

 
第153回:スバルが活躍するアクション映画はミュージカル!?『ベイビー・ドライバー』の画像拡大
「スバル・インプレッサWRX」
1992年にスバルから発売された「レガシィ」より一回り小さなサイズの「インプレッサ」は、WRC参戦モデルのベース車となった。最高性能を持つモデルに与えられたのが「WRX」という名である。映画に登場するのは2代目。現在のWRXはインプレッサとは独立した車種になっている。
「スバル・インプレッサWRX」
	1992年にスバルから発売された「レガシィ」より一回り小さなサイズの「インプレッサ」は、WRC参戦モデルのベース車となった。最高性能を持つモデルに与えられたのが「WRX」という名である。映画に登場するのは2代目。現在のWRXはインプレッサとは独立した車種になっている。拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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