クルマも俳優も的確なキャスティング

ハリウッド映画でスバルのクルマが活躍するというのは、なんとも喜ばしいことだ。これまでは、“ジャップカー”がポジティブな役割を与えられることは少なかった。『ネブラスカ』では、モンタナからネブラスカに向かった主人公が「スバル・レガシィ」に乗っていただけで大男たちに嘲笑(ちょうしょう)されるシーンがある。スバルはアメリカでの販売が好調だと伝えられるが、ピックアップトラックだけが男らしい乗り物だと信じている連中は歯牙にもかけていない。

WRXが活躍するのは残念ながら最初のシーンだけだが、実はもう一度だけスバル車が姿を見せる。サイドからの映像だけなのでトヨタ車である可能性も否定できないのだが、ここはスバル版だと信じたい。

2回目の強盗では、「シボレー・アバランチ」が使われている。クルマと石垣の壁の間を斜めになって走るシーンを撮るために選ばれたのだ。海兵隊員の乗る「ダッジ・ラム」とガンガンぶつけ合うスタントがあり、俊敏なWRXとは別の見せ方でアクションを組み立てている。高性能車だけでなく、「サターン・オーラ」「シボレー・カプリス」といったクルマにも出番がある。それぞれにぴったりの役割が与えられて見せ場を作っており、製作スタッフがクルマのキャスティングに手を抜いていないことがよくわかる。

もちろん俳優のキャスティングも素晴らしい。主人公の“ベイビー”はアンセル・エルゴート。『きっと、星のせいじゃない。』で病に苦しみながらも美少女と純愛を貫いていた若手イケメン俳優だ。今回もストーリーには恋愛要素がある。お相手のデボラはリリー・ジェームズ。『高慢と偏見とゾンビ』ではリビングデッドに格闘技で立ち向かっていたが、この映画ではダイナーのウェイトレスを演じる。この映画は理想的なボーイ・ミーツ・ガールを描いた作品でもあるのだ。2人がコインランドリーで初デートする場面では、トウのたったオヤジやオバサンでもピュアな心を思い出すだろう。「一線は越えていません!」とか「肌を合わせて感じるフィット感が今までとはまったく違うの」とか言っているSPEED恋愛女子にぜひ観てもらいたい。

 
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「シボレー・アバランチ」
シボレーのフルサイズSUV「タホ」をベースに、リアを荷台としたSUT(スポーツユーティリティートラック)。2001年の誕生以来、2世代13年にわたり活躍を続けた。劇中に登場するのは2006年に登場した2代目のモデル。
「シボレー・アバランチ」
	シボレーのフルサイズSUV「タホ」をベースに、リアを荷台としたSUT(スポーツユーティリティートラック)。2001年の誕生以来、2世代13年にわたり活躍を続けた。劇中に登場するのは2006年に登場した2代目のモデル。拡大
 
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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