マセラティ・グラントゥーリズモMC(FR/6AT)/グランカブリオ スポーツ(FR/6AT)
エンジンにとろける 2017.08.26 試乗記 2007年のデビューから10年、「マセラティ・グラントゥーリズモ」が最後(?)のマイナーチェンジを受けた。大排気量の自然吸気V8エンジンをかたくなに守り続ける“ご長寿GT”の、最新のハイパワーターボ車にはない魅力をリポートする。イタリアの“名機”を味わえる最後のモデル
大排気量にして高回転・高出力を実現する自然吸気マルチシリンダーエンジン。長らくクルマ好きにとっての憧れであり続けたそれのハードルがこのところ、見る見る高くなってしまった。
最大の理由は、もはやスポーツカー専業メーカーだろうが避けようのないCO2排出量の削減だ。商品性に直結するパワーは絶対に落とせないとあらば、相反要素を両立させるにはダウンサイジング的なエンジニアリングを採り入れるしかない。そして過給器の採用はそのパワーを年次ごとに計画的に向上させる術(すべ)としてもたけているから、タービン等の部品価格のコストダウンにも計画性をもって臨める。
マクラーレンにフェラーリにAMGに……と、もはやスーパースポーツのエンジンの主流は4リッター前後のV型8気筒だ。それを過給することで軽々と600psオーバー、ものによっては700psオーバーと、その数値は完全にインフレ状態に陥っている。トルクに至っては700Nm超が当然と、これで走ることを押し付けられるタイヤ屋さんの身にもなってほしいと思うほどの大盤振る舞いだ。
先のことは言えないことになってるけど……と前置きした上で、「恐らくこのエンジンが味わえる最後のマイナーチェンジになるだろうね」と先のことを教えてくれた親切なマセラティのエンジニアが、何を指していたかといえばこのクルマ、グラントゥーリズモである。登場から10年がたつも、搭載されるエンジンの基本形式は変わらず自然吸気のV8。フェラーリのエンジニアリングによるティーポF136系は、「F430」や「458イタリア」「カリフォルニア」、珍しいところでは「アルファ・ロメオ8C」などさまざまなモデルに搭載された。マセラティにとっても2000年代以降の主力ユニットということになる。
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