「クルマの歌」に100年の歴史あり

自動車のCMソングではなく、自動車ブランドが歌詞に挿入された超初期の例として、1905年の米国のポピュラーソング『イン・マイ・メリー・オールズモビル』がある。

当時のオールズモビルといえば、アッセンブリーラインを用いた世界初の量産車として1901年に誕生した「カーブドダッシュ」である。

イン・マイ・メリー・オールズモビルがリリースされたのは、その4年後ということになる。クルマを手に入れた若者ジョニーと、ガールフレンドのルシールを描いたものだ。繰り返し部分の「ルシール、僕と一緒においで。すてきなオールズモビルで」をはじめ、たびたびオールズモビルという言葉が盛り込まれている。

この歌は第2次大戦後、メーカーであるゼネラルモーターズが「星のようなパフォーマンス。ロケット・エンジン!」という歌詞に変え、CMソングとして長年使った。

星野哲郎作詞で1964年に小林 旭がリリースした『自動車ショー歌』という特異な例外はあるものの、日本ではスポンサーへの配慮、またブランド名を所有する会社とのトラブルを避けるため、クルマに限らず商標を歌詞に盛り込むことは敬遠されてきた。荒井由実による1975年の『COBALT HOUR』も、「ベレットGT」というフルネームではなく「白いベレG」に留めている。

だが皆無ではない。阿木燿子作詞で1978年に山口百恵が歌った『プレイバックPart2』の歌い出しは、ご存じ「緑の中を走り抜けてく真紅(まっか)なポルシェ」である。今も日本のポルシェオーナーの中には、他人には恥ずかしくて言えなくとも、ステアリングを握りながらこの曲を口ずさむおじさんが存在するに違いない。

「オールズモビル・カーヴドダッシュ」。写真の個体はトヨタ博物館の所蔵車で、1902年型。
「オールズモビル・カーヴドダッシュ」。写真の個体はトヨタ博物館の所蔵車で、1902年型。拡大
「ポルシェ911」。ノスタルジーと投資目的の両方で、欧州ではヒストリックカーの価格が上昇中である。2017年4月ドイツ・エッセンのイベント「テヒノクラシカ」で。
「ポルシェ911」。ノスタルジーと投資目的の両方で、欧州ではヒストリックカーの価格が上昇中である。2017年4月ドイツ・エッセンのイベント「テヒノクラシカ」で。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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