地元イタリアのマシンを日本人が駆る

マシンについては先にも触れたとおり、全日本ラリー選手権と同じくアバルト500R3Tを使用。といっても全日本で使用しているマシンそのものではなく、現地イタリアでレンタルしたものだ。イタリアと日本では車両規則が異なり、全日本仕様のマシンでイタリアやヨーロッパのラリーにそのまま参戦することは不可能。また、ヨーロッパではラリー車のレンタルというのは至って普通のことで、ビジネスとしても成立している。

ちょうどいいので、ここでヨーロッパラリーなどで用いられる車両規定についても説明させていただく。文字数の都合もあるのでおおざっぱに言うと、WRCのトップカテゴリーであり、各メーカーが威信をかけて開発した「WRカー」で競われる「RC1」を頂点に、R5規定のマシンが走る「RC2」、R3規定で競われる「RC3」、2シーターの車両が走る「R-GT」などに分けられている。

中でも、ERCをはじめとした地域選手権のトップカテゴリーが、R5規定で競われるRC2クラスである。R5規定のマシンは、シュコダやシトロエン、ヒュンダイ、プジョー、フォードなどが提供しており、地域選手権だけではなく各国の国内選手権にも参戦が可能。世界のスタンダードともいえるカテゴリーだ。

一方、mCrtがアバルト500R3Tとともに参戦するクラスは、文字通りR3規定で競われるRC3クラス。主なライバルは「シトロエンDS3 R3T」「トヨタGT86 CS-R3」となるのだが、DS3が1600ccターボ、GT86が2000cc自然吸気のエンジンを搭載するのに対し、アバルト500のエンジンは1400ccターボ。なおかつアバルト500はこのなかで最も古く、戦力不足は明らかといえる。

実際、“地元”イタリアで開催された今回のラリーでも、アバルト500R3Tの姿はほとんど見受けられなかった。それどころか、去年のこの大会では、mCrtが唯一のアバルト、唯一のイタリア車での参戦だったのだ。それを日本人ドライバーが駆るというのだから、いやが応にも注目度は高まる。「イタリア選手権なのに唯一のイタ車」ということから愛国心に火がついたか、ギャラリーの声援もひときわ大きかった。

ちなみに、今年はイタリアの若手育成プログラムからRC3クラスにもう1台のアバルト500R3Tが参戦。2年連続で「イタリアのラリーなのに……」という事態は避けられたようだ。

一部を除き、基本的には観戦は無料。老若男女問わず、多くのギャラリーが各ステージに詰めかけた。
一部を除き、基本的には観戦は無料。老若男女問わず、多くのギャラリーが各ステージに詰めかけた。拡大
RGTクラスには3台の「アバルト124ラリー」が参戦。表彰台を独占した。形こそ似ているものの、市販車の「アバルト124スパイダー」とはまるで別物だ。
RGTクラスには3台の「アバルト124ラリー」が参戦。表彰台を独占した。形こそ似ているものの、市販車の「アバルト124スパイダー」とはまるで別物だ。拡大
RC3クラスに参戦する「トヨタGT86 CS-R3」。走らせているのはイタリアのチームだが、ドイツのTMG(Toyota Motorsport GmbH)が支援している。
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イタリア選手権に参戦している「ルノー・クリオR3T」。今回は直接競う相手ではなかったが、同じクラスのエントラントとしてタイム差を測るには好適な存在だった。
イタリア選手権に参戦している「ルノー・クリオR3T」。今回は直接競う相手ではなかったが、同じクラスのエントラントとしてタイム差を測るには好適な存在だった。拡大
RGTクラスに参戦する「ポルシェ911 GT3」。ハッチバック車が主流のラリーでは特異な存在だが、とにかく音が大きくて、子供たちに大人気だった。
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