「格安車イメージ」は植えつけない

やみくもに中国脅威論を振りかざすのが、冷静さを欠くことなのはわかっている。しかし、経験豊富な人材を国籍問わず積極的に幹部に登用する中国資本のフレキシビリティーとメンタリティーは、いまだに「外国人重役」というだけで話題になってしまう日本の自動車産業とは明らかに違う。

同時に、中国車がヨーロッパに進出するにあたり、インド車やかつての韓国車のような低価格路線ではなく、いきなりプレミアム路線で打って出ようとしていることにも注目すべきだ。

これはリスキーだが、正しい選択だろう。

ボクがイタリアに住み始めた1996年は、こちらではヒュンダイ、キアそしてデーウ(現・韓国GM)といった韓国車は「日本車よりもお買い得な街乗りグルマ」だった。今日、ヒュンダイ・キア連合は、ヨーロッパで月8万台以上の新車登録を記録し、トヨタ、日産はもちろんフォード、FCAさえ抜いてしまう主要プレイヤーである。しかし、依然「消極的に選ぶ、日本車の代替品」という印象を持つカスタマーもいる。そうした「格安車イメージ」を、中国車は一気にスキップしてしまおうというわけだ。

成熟化した欧州諸国における自動車ユーザーの嗜好(しこう)の変化も、中国系メーカーにとっては追い風だろう。

クルマのコモディティー化によって、東欧をはじめとする新興国の工場で作られたモデルにも人々はアレルギーを示さない。裕福な人々も、テスラを見ればわかるように、新興ブランドに新たな価値観を見いだしている。

サンダーパワーが出展したSUV。125kWhのバッテリーを搭載し、スペック上の航続距離は650km。
サンダーパワーが出展したSUV。125kWhのバッテリーを搭載し、スペック上の航続距離は650km。拡大
サンダーパワーは、今回の出展車両のデザインについて、「禅」をインスパイアさせるとアピールする。
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サンダーパワーのSUVのインテリア。ダッシュボード全面をディスプレイが覆う。ほかの多くのスタートアップ同様、狙うはラグジュアリーEV市場だ。
サンダーパワーのSUVのインテリア。ダッシュボード全面をディスプレイが覆う。ほかの多くのスタートアップ同様、狙うはラグジュアリーEV市場だ。拡大
こちらは、ダイムラーが出資する新興企業「ヴォロコプター」によるスカイタクシー。
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大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。21年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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