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【スペック】G:全長×全幅×全高=3395×1475×1610mm/ホイールベース=2550mm/車重=1110kg/駆動方式=MR/モーター+リチウムイオンバッテリー(モーター:64ps/3000-6000rpm、18.4kgm/0-2000rpm、バッテリー330V/16.0kWh)/航続距離180km(JC08モード)/価格=380万円(テスト車=387万3500円/2トーン塗装=7万3500円)

三菱i-MiEV G(MR/1AT)/M(MR/1AT)【試乗記】

120万円レスの衝撃 2011.09.07 試乗記 下野 康史 三菱i-MiEV G(MR/1AT)/M(MR/1AT)
……387万3500円/283万1100円

マイナーチェンジを受け、ラインナップが拡充した「三菱i-MiEV」。電池容量が異なる「G」と「M」を、箱根で乗り比べた。

ミツビシの新しい顔

今やミツビシといえば、「i-MiEV」である。ひと昔前までは「ランエボ」だったかもしれない。大昔は、ミツビシといったら即答「パジェロ!」だった。それが現在は排ガス・ゼロのEVだ。CO2削減に関する限り、ミツビシは文句なしの優等生だろう。

2009年7月の販売開始から、日本では4000台が売れた。アメリカはこれからだが、プジョーとシトロエンにOEM供給もしているヨーロッパではすでに8000台が売れたという。ノルウェーでは、「トヨタ・アイゴ」を押さえて、今年上半期のAセグメント・ベストセラーに輝いたそうだ。

そんなi-MiEVにさらなる改良が加えられた。リチウムイオン電池の容量は変えず、エネルギー回生の制御を見直すなどして、これまでより約2割航続距離を伸ばした。JC08モードで180km。200kmの「日産リーフ」に少しでも追いついておこうという作戦だ。従来のi-MiEVは10・15モードで160kmだった。

その一方、容量の少ない電池を採用し、装備を簡略化したエントリーモデルも出した。航続距離は120km(JC08モード)になるが、価格は180km版の「G」(380万円)より大幅プライスダウンの260万円。補助金を充当すると、188万円で買える。Gに対して、こちらは「M」というグレードで、新型i-MiEVはこの2本立てになる。EVにも廉価モデルが登場するとは、EVがまた一歩浸透したことを実感させる。

最初に乗ったのは上級モデルのGである。

「G」は、これまでオプションだったSSDタイプのカーナビや本革巻きステアリングホイール&シフトレバー、前席シートヒーターが標準装備となった。
「G」は、これまでオプションだったSSDタイプのカーナビや本革巻きステアリングホイール&シフトレバー、前席シートヒーターが標準装備となった。 拡大
「G」の標準内装。黒基調のシート表皮を採用する。
「G」の標準内装。黒基調のシート表皮を採用する。 拡大
こちらは「G」にオプション設定される「プレミアムインテリアパッケージ」(4万2000円)。シート生地やインストゥルメントパネルがダークブラウンとなるほか、光輝シルバーのインナードアハンドルやエアアウトレットリング、マットブラック・シルバーフレームのセンターパネルなどが装着される。
こちらは「G」にオプション設定される「プレミアムインテリアパッケージ」(4万2000円)。シート生地やインストゥルメントパネルがダークブラウンとなるほか、光輝シルバーのインナードアハンドルやエアアウトレットリング、マットブラック・シルバーフレームのセンターパネルなどが装着される。 拡大
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上等な“走り”が魅力

新型i-MiEVの試乗会は、箱根仙石原の町立体育館をベースに行われた。ここには急速充電器の設備があるからだ。箱根町内にはほかに2カ所ある。

10・15モードより現実的になったとはいえ、カタログに記載されるJC08モードの航続距離も、あくまで理想的な数値である。EVは高速巡航と上り坂でいちばん電気を食う。180kmをうたうGで東京から箱根まで走ってこられたのだろうか。広報の人に聞いたら、大丈夫だったという。田町の三菱自工本社から仙石原までは100kmあまり。到着したとき、16コマある電池残量計は2コマになっていたが、途中、急速充電器を探すこともなく、完走したという。

箱根でi-MiEVに乗るのは初めてだが、高級な走行感覚はあいかわらずだ。上りのワインディングロードでも、ひとり乗車ならまったくパワーに不満はない。MRだから、ノーズは軽く、ハンドリングもすっきりしていて雑味がない。しかしそういう各論よりも、ひとくちに“走り”が上等なのがi-MiEVの魅力である。新シリーズでは、限界時のシャシーを安定させるASC(アクティブ・スタビリティ・コントロール)が全車に標準装備された。Gの場合、それで航続距離も従来モデルより2割伸びたのだから、悪いはずはない。

ちなみに、満充電でスタートして戻ってきたとき、車載ディスプレイには29km走って、残り67kmと表示されていた。直近の走行パターンから計算した数値だ。箱根をガンガン走ると、航続距離は100kmくらいということである。

では、電池をケチったMはどうだろう。

 
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充電時間の目安は、普通充電の場合「G」が約7時間、「M」は約4.5時間。急速充電(80%充電)では「G」が30分、「M」は15分となっている。
充電時間の目安は、普通充電の場合「G」が約7時間、「M」は約4.5時間。急速充電(80%充電)では「G」が30分、「M」は15分となっている。 拡大
搭載される永久磁石式同期型モーター「Y4F1」は、「G」と「M」で共通。ただし最高出力は「M」のほうが23ps小さく、最大トルクの発生回転域も0-2000rpmから0-1000rpmへと狭くなっている。
搭載される永久磁石式同期型モーター「Y4F1」は、「G」と「M」で共通。ただし最高出力は「M」のほうが23ps小さく、最大トルクの発生回転域も0-2000rpmから0-1000rpmへと狭くなっている。 拡大

比べりゃわかるパワーの違い

エントリーモデルのMはリチウムイオン電池の総電力量をGの16.5kWhから10.5kWhに落とした東芝製の新しい電池を積む。少ない電池容量で少しでも“走らせる”ために、モーターの最高出力も47kWから30kWに落としてある。電池単体の軽量化20kgを含めて、車重(1070kg)はGより40kg軽いが、その優位をもってしても、パワーの差は体感できる。ガソリン車でいうと、Gが1.5リッターなら、Mは1.3リッターくらいの感じだ。回生ブレーキをより強力にしているためか、アクセルを戻したときの“エンジンブレーキ感”もGより強く感じた。そのため、Gほどの伸びやかな爽快感はない。

Mに乗ったのはわずかな時間だったが、10km走って、残り69kmと表示されていた。箱根カッ飛び走りオンリーだと航続距離は80kmくらいということになる。

だが、前述した動力性能の違いは、直接乗り比べたから感じたのであって、Mだってまごうことなきi-MiEVだ。これにだけ乗っていたら、おそらく走りに不満を感じることはないはずだ。

とすると、120万円レスの衝撃は大きい。Mは急速充電機能もオプションだ。付けてもプラス5万2500円だが、260万円の素のままだと100/200Vの“家充電”のみで使う、いわば「遠乗りはしません仕様」である。それでも、正味80kmも走ってくれれば十分という自動車ユーザーは都市部などにたくさんいるだろう。

今後、EVが増えてくれば、急速充電器だって混み合う。急速充電器をハシゴしながらのロングドライブは、“冒険”としてはアリかもしれないが、現実的ではないし、だれにでも薦められるようなことではないとぼくはみている。

(文=下野康史/写真=郡大二郎)

【スペック】M:全長×全幅×全高=3395×1475×1610mm/ホイールベース=2550mm/車重=1070kg/駆動方式=MR/モーター+リチウムイオンバッテリー(モーター:41ps/2000-6000rpm、18.4kgm/0-1000rpm、バッテリー270V/10.5kWh)/航続距離120km(JC08モード)/価格=260万円(テスト車=283万1100円/2トーン塗装=7万3500円/急速充電機能+15インチアルミホイール+オートライトコントロール+リバース連動リアワイパー+キーレスオペレーションシステム=14万1750円/寒冷地向け装備(運転席シートヒーター+ヒーテッドドアミラー+冷却水温度変更)=1万5850円
【スペック】M:全長×全幅×全高=3395×1475×1610mm/ホイールベース=2550mm/車重=1070kg/駆動方式=MR/モーター+リチウムイオンバッテリー(モーター:41ps/2000-6000rpm、18.4kgm/0-1000rpm、バッテリー270V/10.5kWh)/航続距離120km(JC08モード)/価格=260万円(テスト車=283万1100円/2トーン塗装=7万3500円/急速充電機能+15インチアルミホイール+オートライトコントロール+リバース連動リアワイパー+キーレスオペレーションシステム=14万1750円/寒冷地向け装備(運転席シートヒーター+ヒーテッドドアミラー+冷却水温度変更)=1万5850円 拡大
 
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下野 康史

下野 康史

自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。

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