劇的に進化した新型スピナー

『ブレードランナー』では、地上と空中を自在に飛び回る飛行車の「スピナー」が未来感を演出した。今作の冒頭では、kが新型スピナーに乗って巨大な太陽電池ゾーンを抜け、郊外まで飛行する。疲れているようで彼は半分寝ているが、目的地までは自動運転で到達するようだ。1982年の段階では人間が操縦していた。技術の進歩に沿って、映画の描写も変わっていく。劇的な進化を遂げたのがワイパーである。トーナメント型からフラット型に変わり、降り注ぐ雨を排除して視界を確保する。

動力も30年の間に変わったようだ。前作では1950年代のクルマも走っていたが、2049年にはさすがに内燃機関は存在していないようだ。スピナーのパワーユニットも一新されたのだろう。前は地上では普通のクルマのようにタイヤで走行していたが、今回は地上でも少し浮いているように見える。それでもなぜか前2輪、後ろ1輪という三輪車のフォルムだ。

メーカーも変わっている。前作のスピナーはアルファ・ロメオ製だった。1982年は「アルフェッタ」や「アルファスッド」を製造していた時期である。今回お役御免になってしまったのは、4年後にフィアット傘下に入ったことが理由なのだろうか。新型スピナーには、「PEUGEOT」のエンブレムが光っている。ほかの型のスピナーは出てこないので、プジョーが独占的に製造していると思われる。

自動運転も飛行車も、世界中の自動車メーカーが技術開発を急いでいるテーマだ。現時点でプジョーが優位に立っているという情報は伝わっていないが、実はひそかに革新的な技術を手中に収めつつあるのかもしれない。そうだとすれば、今のうちにプジョー株を買っておけば大もうけできる可能性もある。

2049年には、乗り物以外にも素晴らしい技術が開発されていた。kが交際している女性ジョイはAIなのだ。『スクランブル』でセクシーな自動車泥棒だったアナ・デ・アルマスが、完全無欠な理想の彼女を体現している。肉体はないけれど、アクロバティックな方法で愛をかわすこともできる。ライアン・ゴズリングは2007年の『ラースと、その彼女』ではダッチワイフと交際していたから、3次元ホログラムと恋をするのも納得である。

(文=鈴木真人)

 
第158回:未来の自動車市場はプジョーが独占する?『ブレードランナー 2049』の画像拡大
 
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『ブレードランナー 2049』
2017年10月27日(金)全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
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	2017年10月27日(金)全国ロードショー
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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