癒やしであり、異変察知の足がかりでもある

完全な自動運転が実現した暁には、たとえば電車や飛行機の設(しつら)えがそうであるように、乗員の各席でいかにパーソナルな環境を保(たも)てるかが快適性に大きく関わってくるだろう。1人は電話、1人は音楽、そしてもう1人は映画……と、異なる音源が狭い車室内で混同することなく成立できないか。ハーマンではいわば音のパーティションによって席間を区切る、「インディビジュアル・サウンド・ゾーン」の開発も進めている。これはヘッドレストに仕込まれたスピーカーを軸に、各席のそばにあるスピーカーを個別にコントロールすることで、立体感を損なわずにソースの分離を可能にしたもので、その試作車での試聴では完全な隔絶感とは言えないまでも、隣席のコンテンツが気にならない分割が確認できた。並行して開発が進んでいる、シートバックに低音専用の共振体を内包する「パーソナル・ベース・インパクト」を加えれば、より臨場感の深い音場をおのおので楽しむことも可能になるだろう。

そして本筋である空間全体の音響設計においては、先に発表された新型「レクサスLS」のマークレビンソンに搭載された360度サラウンド=Quantum Logic Immersion(QLI)のようなデジタルテクノロジーをフルに生かしたシステム構成だけでなく、ハーマンのプロフェッショナル部門が手がける世界の名門コンサートホールのアコースティック特性を再現するイコライジングのフォーマット化を開発している。

いつの時代も音は、人間にとって癒やしの大切な要素だ。とともに、そこから得る情報は、目以上に素早く異変の察知につながることもある。自動運転という新たな移動環境が、その両面をひとつの空間に結びつけることになる。ハーマンはそこを見越して研究を進めているわけで、その技術はより車両制御側へと近接したものになるだろう。

(文=渡辺敏史/写真=ハーマン・インターナショナル/編集=竹下元太郎)

シートバックに低音専用の共振体を内包する「パーソナル・ベース・インパクト」。
シートバックに低音専用の共振体を内包する「パーソナル・ベース・インパクト」。拡大
「パーソナル・ベース・インパクト」を併用すれば、より臨場感の深い音場をおのおので楽しむことが可能になる。
「パーソナル・ベース・インパクト」を併用すれば、より臨場感の深い音場をおのおので楽しむことが可能になる。拡大
ISZ(インディビジュアル・サウンド・ゾーン)は、ヘッドレストに仕込まれたスピーカーを軸に、各席のそばにあるスピーカーを個別にコントロールすることで、立体感を損なわずにソースの分離を可能にした技術だ。
ISZ(インディビジュアル・サウンド・ゾーン)は、ヘッドレストに仕込まれたスピーカーを軸に、各席のそばにあるスピーカーを個別にコントロールすることで、立体感を損なわずにソースの分離を可能にした技術だ。拡大
ISZの試聴では、完全な隔絶感とは言えないまでも、隣席のコンテンツが気にならない分割が確認できた。
ISZの試聴では、完全な隔絶感とは言えないまでも、隣席のコンテンツが気にならない分割が確認できた。拡大
世界のコンサートホールのアコースティック特性を再現するイコライジングのフォーマット化も研究が進んでいる。
世界のコンサートホールのアコースティック特性を再現するイコライジングのフォーマット化も研究が進んでいる。拡大
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