実は2台存在した

映画用に製作されたロードスターは、実は2台ある。長年、そうウワサされてきた。うち1台は、実際に劇中車として映画にも登場し、数奇な運命をたどったのちに、現在は収まるべき場所=トヨタ博物館に里帰りを果たした有名な個体である。

それではもう1台は、どこに行ったのだろうか? いや、やっぱり1台しかなかったのだろうか。

長年、マニアが発し続けてきた疑問に答えを出したのが、日本を代表するコレクターのひとりであり、トヨタ2000GTにとりわけ造詣の深い、M氏だった。

氏は国内某所にて、長年にわたり打ち捨てられたも同然にしまい込まれている“もう1台のボンドカー”存在情報をいち早くつかみ、オーナーに掛け合った。多くの歳月を露天に放置されて過ごしてきたためか、状態はサイアクと言っていいものだった。しかも、無造作に積み上げられた荷物の重みで、車体は無残にもへこんでいた。M氏はそんなボンドカー#2のレストアを決意する。

がしかし、レストレーションは困難を極めた。何しろ元からして試作車がベースである。市販モデルとは似ているようでいて違っている。当然、基本データなどは残っていない。おそらく、ロードスター化も現場合わせで進んだであろうと推測される。それでもM氏は、ありとあらゆる資料や映像を分析しつつ、復元に努めた。特に、エンジンに関しては、プロトタイプ仕様が奇跡的に積まれたままであり、歴史的にみても貴重な資料材料だと言っていい。もう1台のボンドカーは残念ながら積み替えられているのだ。

足掛け8年にもわたるフルレストレーションの結果、そのボディーワークは先だってヤマハで開催された50周年の記念オーナーズミーティングで披露され、そして、内装が仕上がり、エンジンも稼働する状態の完成形が台風の最中に京都は東寺で開催された2000GTミーティングで披露された。ひとりの男の2000GT愛が、長い間幻とされてきた自動車界における1台の宝物を、この世に取り戻したのだった。

来る11月4日、トヨタ博物館で開催される2000GTの50周年ミーティングでは、いよいよ、2台の真性ボンドカーが50年のときを隔てて再会することになる。その歴史的瞬間の目撃者に、クルマ好きの貴方もなってみてはいかがだろう。

(文=西川 淳/写真=浦野浩之/編集=竹下元太郎)

完全復活を遂げたもう1台の“2000GTボンドカー”。
完全復活を遂げたもう1台の“2000GTボンドカー”。拡大
インテリアも見事にレストアされている。
インテリアも見事にレストアされている。拡大
「トヨタ2000GT」の発売は1967年5月。今年でちょうど50周年となる。半世紀を経ても、その美しさに変わりはない。
「トヨタ2000GT」の発売は1967年5月。今年でちょうど50周年となる。半世紀を経ても、その美しさに変わりはない。拡大
2017年11月4日にトヨタ博物館で開催される「2000GT」の50周年ミーティングで、いよいよ2台のボンドカーが再会する。
2017年11月4日にトヨタ博物館で開催される「2000GT」の50周年ミーティングで、いよいよ2台のボンドカーが再会する。拡大
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