まるで映画のような世界

プーリア州からやってきて、イベントの中心であるグランデ広場に店を広げていたナザリオさんは、1968年生まれだ。彼のブースに緑色の自転車があった。1950年代のもので、レザー製バッグが荷台脇に付いている。ナザリオさんは「“床屋の自転車”だよ」という。

「その昔、移動理髪師っていうのがいたんだ。バッグにハサミやバリカンを入れては人々の家をまわって、客の自宅で散髪してたんだ」

まるで映画のような世界である。ちなみに、この自転車の価格は1200ユーロ(約15万8000円)だ。

広場の回廊にいたジュリアーノ&エミリア夫妻は地元アレッツォ在住で、1976年から40年以上屋台を開いているという。彼らの屋台には「FIAT」のロゴが刻印されたスパナがあった。夫妻が得意とするのは鉄製品なのである。

「この仕事の楽しみ? 毎週末、丹念にさびをとっていくことだよ」とジュリアーノさんは語る。

南部プーリアからやってきた骨董商ナザリオさん。写真の自転車は、その昔、理髪師が出張サービスに使用していたもの。
南部プーリアからやってきた骨董商ナザリオさん。写真の自転車は、その昔、理髪師が出張サービスに使用していたもの。拡大
アレッツォ旧市街の中心であるグランデ広場。左に見えるモーターサイクルは「ジレッラ125トウリズモ」(1949年)で、価格は2000ユーロ。
アレッツォ旧市街の中心であるグランデ広場。左に見えるモーターサイクルは「ジレッラ125トウリズモ」(1949年)で、価格は2000ユーロ。拡大
アレッツォに住む、この道30年のジュリアーノ&エミリア夫妻。
アレッツォに住む、この道30年のジュリアーノ&エミリア夫妻。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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