『007』のあの人がダメ男役!

監督がこの脚本を気に入ったのも無理はない。『オーシャンズ』シリーズと似た構成のクライムアクションものなのだ。派手なアクションシーンや銃撃戦がなく、1人として死人が出ないところも同じ。CGに頼った爆発シーンばかりの映画を作るのはイヤで、緻密に計算されたプロットで観客を驚かせる作品を作りたいのだ。

まったく違うのは、犯罪に関わるメンバーの素性だ。『オーシャンズ』では実績を持つプロの泥棒や詐欺師が集まったが、『ローガン・ラッキー』に登場するのは素人ばかりである。ダニエル・クレイグが演じるジョー・バングは一応爆破のプロということになっているが、実際にはかなり危うい仕事ぶりだ。クレイグは『007』でのタフでダンディーな姿とはかけ離れたキャラで、ガサツでいい加減な男である。役作りのために自分で髪を脱色したというから、ダメ男になり切ることを楽しんだのだろう。

主人公のジミー・ローガンはとてつもない不運を背負った男。監督は『マジック・マイク』のストリッパー役がハマっていたチャニング・テイタムを起用した。この人は筋肉が多めで知恵が少なめという役が多いが、今回はハダカが売りではない。アメフトのスター選手だったのに膝を故障してプロへの道を絶たれ、炭鉱で働いていたが足が悪いことでクビになる。妻には捨てられ、娘に会うこともままならない。

弟のクライドも、幸運の持ち主とは言えない。イラク戦争で勇敢に戦ったが、左腕を失った。義手をつけてはいるが、『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』のフュリオサのような高性能版ではない。バーテンダーとして働いていて、片手で器用にカクテルを作る。アダム・ドライヴァーはそのシーンのために特訓を積んだらしい。

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第159回:サーキットの地下で不運な男たちが現金を狙う『ローガン・ラッキー』の画像拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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