来季、トロロッソでうまくいけば……

ホンダの不振については、パワーユニットの開発が栃木県の「HRD Sakura」で行われているという距離的な問題や、他社との協業に消極的な姿勢(今夏にはイルモアとホンダが手を組み始めたとの情報が流れたが、自前主義に徹したからか、社外への情報流出を避けたかったからか、その具体的情報は開示されなかった)なども指摘できるが、「組む相手がマクラーレンだった」という点もプラスに働かなかったと見られる。

昨年秋、マクラーレンを常勝チームに育て上げたロン・デニスがトップの座から“追放”された。現在チームは、デニスの相方であったマンスール・オジェとバーレーンの投資会社の主導で、マーケティング畑を歩いてきたザック・ブラウンを中心にリストラクチャリングを敢行中。マシン名「MP4」をはじめ“デニス色”は急速に消されている。こうしたマクラーレン内の政治的内紛が、デニス体制を象徴するホンダとの関係性に影響を及ぼしたとも考えられる。少なくともホンダは、理解者のひとりを失ったのだ。

かように問題を挙げると、ホンダの前途が有望とは言い切れない。メルセデスやフェラーリは、2018年で5年目となる現行パワーユニットの完成度を相当に高めており、いまやテールエンダーのホンダが相手にするには手ごわすぎるほど。さらに2021年からは新規定が始まる予定で、それまであと3年の猶予しかない。

ひとつ光明を見いだすとすれば、それはホンダの新パートナーがトロロッソであるということだ。レッドブル資本が入っているとはいえ、イタリアに本拠を置くこのチームの規模は下から数えた方が早い。名門レーシングチームであり、いまや高級自動車メーカーをも包含する大企業マクラーレングループとは違い、はるかに付き合いやすく、ホンダもまた大自動車メーカーとしてリードできる立場につけるだろう。

ホンダが世界を席巻した「F1第2期」(1983~1992年)は、下位カテゴリーのF2で実績を積み、そこで縁のあった「スピリット」を強引にF1チームに仕立てて始まった。その年の最終戦で、チャンピオンチームながらターボエンジン化に乗り遅れていたウィリアムズにくら替え。多くのチャレンジと失敗を繰り返し、1986年からコンストラクターズ2連覇を達成、ついに頂点にまでのぼりつめた。マクラーレンとの「最初の結婚」は、あくまで幾多の挑戦の結果だったのであり、大記録も一朝一夕に成し得たものではなかった。

勝つためにホンダがやらなければならないことは、挑戦し続けることしかない。勝ちまくっていた第2期とはルールも環境も違うのは明らか。しかし、時代を超えて参戦し続ける意味は大きい。エンジンメーカーとしてのメルセデスが1994年以来、ずっとF1に関わり続けているという事実も忘れてはならないだろう。

2018年にいい流れをつかめば、強豪レッドブルと手を組むことだって夢ではない。何しろレッドブルだって、同じく苦境に立たされているルノーのパワーユニットと「離婚」したがっているのだから。

(文=柄谷悠人/写真=マクラーレン、トロロッソ/編集=関 顕也)

来季からホンダ製パワーユニットを搭載することになったトロロッソ(写真)。世界的企業ホンダを相手にしたワークス体制は、イタリアをベースとしたこの小規模チームにとっては夢のようなチャンスだ。パワーユニットのコストが削減され、その分をマシン開発に回すこともできるだろうが、パートナーシップ発表が9月と遅かったことが2018年仕様のマシン開発に影響していないか心配される。フランツ・トストという名物ボスを筆頭にした、小さくてもキラリと光るチーム。親分格のレッドブルとの協業だって狙える、再起を図るホンダには最適かもしれないパートナーだ。
来季からホンダ製パワーユニットを搭載することになったトロロッソ(写真)。世界的企業ホンダを相手にしたワークス体制は、イタリアをベースとしたこの小規模チームにとっては夢のようなチャンスだ。パワーユニットのコストが削減され、その分をマシン開発に回すこともできるだろうが、パートナーシップ発表が9月と遅かったことが2018年仕様のマシン開発に影響していないか心配される。フランツ・トストという名物ボスを筆頭にした、小さくてもキラリと光るチーム。親分格のレッドブルとの協業だって狙える、再起を図るホンダには最適かもしれないパートナーだ。拡大
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