主人公はシリア難民

主人公のカーリドはシリア難民である。石炭を運ぶ船に潜んでヘルシンキにやってきた。黒いヒゲが目立つ濃いめの顔で最初は山田孝之かと思ったが、アラビア語を話すから別人だとわかった。シリア生まれのシェルワン・ハジが演じている。なかなかのイケメンで、カウリスマキ映画には珍しいタイプだ。監督は「私は左右対称の顔が好きではない」と公言していて、顔にひずみがあったりデコボコしていたりする役者を選ぶことが多い。

カーリドはもちろん不法入国者だ。すぐに警察に行って難民申請を行う。審査が行われている間は、収容施設で生活することになる。先に入所していたイラク人のマズダックと仲良くなり、フィンランドの難民事情と生活術を伝授される。国は違っても、同じ境遇の仲間なのだ。

かつてカーリドが住んでいたのはアレッポだ。いわゆる「イスラム国」が支配していた都市で、激しい戦闘が行われたことで知られている。命からがら妹と一緒に脱出するが、ハンガリー国境で起きた混乱の中で生き別れになってしまう。妹を探してフィンランドに呼び寄せることが彼の切なる願いなのだ。

もう一人の主人公が、どんよりとした中年男のヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)である。仕事を辞めて妻と別れ、新たな人生に向けて一歩を踏み出そうとしていた。数々の幸運に恵まれて大金を手にした彼は、レストランオーナーという夢を実現させる。とはいっても、居抜きで手に入れた店はあまり流行(はや)っているようには見えない。従業員もそのまま引き継いだが、ヤル気のある人間はいないようだ。メニューはミートボールとサーディンだけで、缶詰を開けただけで提供するという超手抜き料理である。

© SPUTNIK OY, 2017
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第160回:レアなアメリカ車が難民青年を乗せて走る『希望のかなた』の画像拡大
 
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鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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