的はずれな報道への反撃

次世代に向けて自動車が激変しようとしている今、未来を決めるのは技術だけではない。中国のニュー・エネルギー・ビークル規制法(NEV法)や米カリフォルニア州のゼロ・エミッション・ビークル(ZEV)規制などに影響されるからだ。これらの規制に対応するとしながらも、阿部氏は「おつきあいでやっていくつもりはない」と明言した。自動車が一気にEVに置き換わるのは難しいという現状認識である。
 
ヨーロッパで進められている48Vバッテリーを使ったマイルドハイブリッドシステムについても、懐疑的な考えを示した。効率のいい技術ではなく、2050年のゴールを見据えると限界がある。それでもまったく無視するわけではなく、ヨーロッパの動向を見ながら対応を考えると言う。全方位の開発を進めるのがトヨタの方針だ。それができるのは、これまで育て上げてきた豊富な技術の蓄積があるからだろう。
 
筆者は、最終日の午後の説明会に参加したのだが、この回だけ特別なゲストが来場していた。初代プリウスの開発を主導した、内山田竹志会長である。

「プリウス発売20周年ということで、舞台裏でシステムはどう進化しているのか、20年間の技術史のようなものをうちの技術者が直接皆さんとお話しできればということで企画しました。私も見てみたいなとのぞきにきたんですよ」

笑顔で話す内山田氏の表情からは、電動化車両の先駆者としての自負が読み取れた。

このタイミングで電動化についての説明会を開催した理由は明らかだろう。あからさまには言わなかったが、「トヨタはEV開発で出遅れた」などと報道されていることへの反論と抗議である。生半可な知識で不安をあおり立てる不勉強な記者や自称評論家に、クルマの電動化についての基礎知識を懇切丁寧に教え諭したわけだ。自動車に関わる者なら言われなくてもトヨタの底力を知っているから、一般メディアを呼ぶことに意味があった。

説明してくれたエンジニアに「的はずれな記事を読むと腹が立ちませんか?」と聞いてみると、困ったような笑みを浮かべながら、いえいえ、と首を横に振った。怒っているというよりも、あきれているのだろう。彼らは激烈な開発競争の最前線で戦っている。トンチンカンな報道に付き合っているヒマはないのだ。

(文と写真=鈴木真人/編集=関 顕也)
 

基調報告を行った、トヨタのパワートレーンカンパニー常務理事を務める安部静生氏。
基調報告を行った、トヨタのパワートレーンカンパニー常務理事を務める安部静生氏。拡大
説明会の様子。自動車メディア、一般メディアを対象に、計4回行われた。
説明会の様子。自動車メディア、一般メディアを対象に、計4回行われた。拡大
初代「プリウス」の開発責任者だった内山田竹志会長も来場。もともと出席の予定はなかったが、気になってのぞきにきたのだという。
初代「プリウス」の開発責任者だった内山田竹志会長も来場。もともと出席の予定はなかったが、気になってのぞきにきたのだという。拡大
FCV「ミライ」のカットモデル。リアシートの下に高圧水素タンクが配置されている。
FCV「ミライ」のカットモデル。リアシートの下に高圧水素タンクが配置されている。拡大
2012年に発売された「eQ」は航続距離100km(JC08モード)。価格は360万円で、100台の限定販売だった。
2012年に発売された「eQ」は航続距離100km(JC08モード)。価格は360万円で、100台の限定販売だった。拡大
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