ドライバーの個性はさまざま

その晩もう一度Uberを呼ぶと、別のプリウスがやってきた。参考までにいうと、今回計8回利用したうち、半分にあたる4回はトヨタ・プリウス(先代3台、現行1台)だった。

今度は、ネパール出身の男性ドライバーだった。「コリアンかい?」とボクに聞くので「いや、ジャパニーズだ」と答える。すると彼は「弟はエベレストで登山ガイドをやっててね。日本人もたくさん来るよ」とうれしそうに話した。

チャイナタウンから乗った、女性ドライバーの「レクサスES」には、先客として未成年と思われる女子が乗っていた。彼女は始終無言でスマートフォンをいじっていたが、ボクは「そうか。まだ免許がない若者の、夜の外出にも、ライドシェアは安全で便利に使えるな」と思った。ボクが降車するときもその女子はあいさつがなかったから、もしかしたら彼女は女性ドライバーの娘で、学校が終わったあと母親の仕事中はずっと乗っているのかもしれない。

ドライバーに怒られてしまったときもあった。気を利かせたつもりで大通りに出て待っていたら、「日産アルティマ」でやってきたその女性運転手は「停車しにくいところで待ってないでヨ!」とぼやいた。

しかし、やがて相乗り客が途中下車してボクとふたりだけになると、彼女がボクに居住国を聞いてきた。「イタリア」と答えると、「私はヒスパニック系よ。スペイン語とイタリア語は親戚のようなものね。アハハ」とフレンドリーなムードに変わった。そして、ボクのスマートフォンのバッテリー残量が危うくなると、日本のタクシーの行灯(あんどん)にあたる、ダッシュボード上のサインを点灯するためのコードをシガーライターソケットからわざわざ引っこ抜いて、電源を提供してくれた。

車内でクルマ談義に花が咲いたこともあった。あるドライバーが「日本で一般的なタクシーって、どんなもの?」と言うので、前席に座っていたボクが「トヨタ・クラウン コンフォート」について説明したときである。これからサンディエゴに向かう旅の途中というショートパンツの若者が身を乗りだしてきて「トヨタ・キャムリー(『カムリ』のこと)よりデカいのか?」と興味深げに質問してきた。カムリは、この国でクルマを語るとき、メートル原器のひとつになるかもしれない。

最後の晩に乗ったドライバーの相棒は、そのカムリだった。ボクがロサンゼルスショー帰りであることを話すと、「俺もクルマ好きでさ」と返してきた。かつて1970年代のシボレー製ピックアップトラック「エルカミーノ」を持っていたという。「エルカミーノといえば、なんといっても1959年製ですよねえ」とボクが言うと、「いつか59年型を買うのが俺の夢だよ」と、彼はうれしそうに答えた。

事実上の中央駅であるユニオンステーションには、ライドシェア用の乗り場も整備されている。この「ジャガーSタイプ」もUberのライドシェア車だった。
事実上の中央駅であるユニオンステーションには、ライドシェア用の乗り場も整備されている。この「ジャガーSタイプ」もUberのライドシェア車だった。拡大
ライドシェアのクルマで、ロサンゼルスのダウンタウンに向かう。
ライドシェアのクルマで、ロサンゼルスのダウンタウンに向かう。拡大
自動車での移動を前提に形成された都市・ロサンゼルス。昨今では、市当局および交通局の主導で自転車のシェアリングが行われている。現在扱われているのは約1400台で、料金は30分3.5ドル、1日7ドル。
自動車での移動を前提に形成された都市・ロサンゼルス。昨今では、市当局および交通局の主導で自転車のシェアリングが行われている。現在扱われているのは約1400台で、料金は30分3.5ドル、1日7ドル。拡大
チャイナタウンの給油所にて。給油スペースの屋根もオリエンタルなデザイン。
チャイナタウンの給油所にて。給油スペースの屋根もオリエンタルなデザイン。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。20年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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