クルマ好きにとっても身近な素材

アルカンターラといえば、クルマ好きの間ではステアリングホイールやシート、ドアトリムなどに使用される表皮として知られる素材である。その名を知らない人にも、「スエードを思わせる細かな起毛と、滑らかな手触りが特徴の……」と説明すれば、思い出してもらえることだろう。

さらりとした触感と同時に滑りにくさも備えていることから、主にスポーツカーやGTカー、高級サルーンなどに使われる例が多く、例えば今回のロサンゼルスショーの展示車両でも、ポルシェのGTSシリーズに、BMWやアウディ、アルファ・ロメオのハイパフォーマンスモデル、「レクサスLC」「アキュラNSX(日本名:ホンダNSX)」、さらにはコンセプトカーの「フォルクスワーゲンI.D.CROZZ II」にまで使用されているのが見受けられた。

ちなみに、直近の業績は2016年の純売上高が1億8720万ユーロ、営業利益が4510万ユーロである。同年の平均為替で換算すると、それぞれ約224億6400万円、約54億1200万円。世界中が金融危機にゆれた2009年の業績と比較すると、前者が約3倍、後者が5.7倍に拡大したことになる。

このように、自動車の世界において高級素材メーカーとしてひとかどの地位を得ているアルカンターラだが、実はアパレルや家具、家電製品といった分野でも知られており、拠点を構えるイタリア・ミラノと、中国・上海には、ブランド発信基地を兼ねたショールームも開設しているのだとか。さらに、近年では女性用シューズメーカーの英ニコラスカークウッドや、パナソニック、マイクロソフトなどとのコラボレーションも実施。今回のパーティーでも、よくよく見ればモーゼス氏のアート作品は、すべてアルカンターラを使ったものだった。

堅調に業績を伸ばすアルカンターラが、わざわざ新しい取り組みに臨む理由とはなんなのか? そもそも、基本的にBtoBのビジネスをもっぱらとする素材メーカーが、独自のショールームを開設したり、著名人を招いたパーティーを開いたりといったブランディング活動に取り組む意義は何か。

そんなぶしつけな疑問をアルカンターラ社長兼CEOのアンドレア・ボラーニョ氏にぶつけたところ、意外な言葉が返ってきた。
「あなたは日本の方ですよね。アオヤマにあるレクサスカフェをご存じですか?」

2017年のロサンゼルスショーで世界初公開された「ポルシェ718ボクスターGTS」(右)と、「718ケイマンGTS」(左)。ともに内装にはふんだんにアルカンターラが用いられている。
2017年のロサンゼルスショーで世界初公開された「ポルシェ718ボクスターGTS」(右)と、「718ケイマンGTS」(左)。ともに内装にはふんだんにアルカンターラが用いられている。拡大
アルファ・ロメオのブースに展示されていた、「ジュリア クアドリフォリオ」のシート。
アルファ・ロメオのブースに展示されていた、「ジュリア クアドリフォリオ」のシート。拡大
アルカンターラの素材は日本メーカーのモデルにも多用されている。写真は「レクサスLC500」。
アルカンターラの素材は日本メーカーのモデルにも多用されている。写真は「レクサスLC500」。拡大
フォルクスワーゲンのコンセプトカー「I.D.CROZZ II」のインテリアにも、アルカンターラが用いられていた。
フォルクスワーゲンのコンセプトカー「I.D.CROZZ II」のインテリアにも、アルカンターラが用いられていた。拡大
アルカンターラ社長兼CEOのアンドレア・ボラーニョ氏。
アルカンターラ社長兼CEOのアンドレア・ボラーニョ氏。拡大
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