イタリアにおけるカーボンオフセットの先駆者

こうした素材そのものの強みに加え、ボラーニョ氏はブランディングにおいて力を置いている点として、「イタリア製のプロダクトであること」の訴求と、事業の持続可能性・環境負荷低減の追求を挙げた。

本革製品を提供するポルトローナ・フラウや、生地メーカーとしても知られるエルメネジルド・ゼニアなど、イタリアにはブランドとして名を成している素材メーカーやブランドが数多く存在している。そんな土壌は、同じ地に拠点を構えるアルカンターラにとってもゆるぎないアドバンテージなのだ。

一方、後者については少々意外に思われるかもしれないが、実はブランディングの世界においては「メーカーの取り組みまで観察する」というのは当たり前のことのようだ。他社とのコラボレーションを通して、自社製品のプライオリティーを高めたいと考える企業が、貴重な資源を浪費し、工場からえんえんとCO2や汚染物質を垂れ流す素材メーカーと取引したいとは思わないだろう。

特にアルカンターラは、イタリアでいち早く“カーボンオフセット”を提唱した先駆者としての自負を持っており、現在も国連の推進する30のプロジェクトに出資している。もちろん製品の製造段階における環境負荷低減にも取り組んでおり、バイオ原料を使った製品の研究も推し進めているという。

自動車の分野を見ても、BMWの「i」を筆頭に、バイオ素材やリサイクル素材を積極的に用いることが、先進性を掲げるブランドにおいてひとつの潮流となりつつある。ブランドイメージの話以前に、持続可能な未来を模索する産業界の一員として、環境負荷の低減はコモンセンスとなっているのだろう。

今のところ、記者を含めた日本の消費者の間に、「使われている素材や、そのメーカーの姿勢から製品を選ぶ」という視点ははぐくまれていないように思う。しかしいずれは、クルマ好きの間で「アルカンターラが使われているから、このクルマを選んだんだよ」という話が聞かれる日が来るのかもしれない。

(webCG ほった)

イタリアのミラノに位置するアルカンターラの本社。
イタリアのミラノに位置するアルカンターラの本社。拡大
イタリア・テルニ県のネーラ・モントーロ工場。アルカンターラの環境負荷低減に対する取り組みは生産現場にも見られ、同工場には排液を樹木の蒸散作用を利用して浄化する「フィト・トリートメント」という処理システムが導入されている。
イタリア・テルニ県のネーラ・モントーロ工場。アルカンターラの環境負荷低減に対する取り組みは生産現場にも見られ、同工場には排液を樹木の蒸散作用を利用して浄化する「フィト・トリートメント」という処理システムが導入されている。拡大
 
第464回:素材の力で新しいライフスタイルを提案アルカンターラに見る素材メーカーのブランド戦略の画像拡大
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