アウディA5スポーツバック2.0 TFSIクワトロ スポーツ(4WD/7AT)
美しさと日常性は両立する 2017.12.26 アウディA5/S5シリーズを体感する<PR> そのクルマの真の姿を知りたければグランドツーリングに出てみるといい。優雅なだけでなく、高い実用性をも備えた「アウディA5スポーツバック」は、おそらくいつもよりずっと雄弁にアウディの実力を知らしめてくるはずだからだ。美しさは機能に従うのだ、と言わんばかりに!走る芸術作品
芸術家肌のKカメラマンは少しずつアングルを変えながら何度もシャッターを切っていた。本来、彼ほどの実力の持ち主であれば撮影アングルで迷うことなどない。クルマの周囲をぐるりと回れば絵になる角度がすぐに見つかるので、候補となるポイントはあっという間に絞られる。あとはそこに三脚を立ててフォーカスをあわせれば勝負はついたも同然。ひと仕事おしまいてなものである。
それでもKカメラマンはいつまでも飽かずに撮影していた。ベテランには珍しいことだが、それは決して迷っていたからではない。角度を少しずらせば新たな美しさが次々と浮かび上がる。そのすべてを作品として収めたい。そんな芸術への探求心が、Kカメラマンにシャッターボタンを押させる原動力になっていたのではないか。私にはそう思えて仕方なかった。
Kカメラマンと私の目の前にたたずんでいたのは、半年ほど前に2代目に生まれ変わったアウディA5スポーツバックである。たとえその名を知らなくとも、「デザインが美しいアウディの5ドアハッチバッククーペ」といえば、多くのクルマ好きが「ああ、あれか」と思い当たるのではないか。
シンプルでありながら慎重に練り上げた面とラインで構成されたA5スポーツバックのスタイリングはたしかに美しい。ただし、このデザインが本当に優れていると思えるのは、微妙に角度を変えて眺めても立体的な造形の美しさが崩れず、次々と新しい表情を見せてくれる点にある。あのKカメラマンが、思わず立て続けにシャッターを切ってしまったように……。
とりわけ見事なのがリアクオーター周り、つまり斜め後方から見たときの造形である。ここは、ルーフからなだらかに下降するラインとボディーサイドのウィンドウグラフィックス、量感豊かなリアフェンダー、テールゲート、テールライト周りのデザインなどが複雑に交錯するエリア。それらを寸分の狂いもなく、立体的にまとめあげる力はなまなかなものではない。
もちろん、緻密なデザイン作業の成果が目の当たりにできるのはリアクオーターだけでなく、前後のホイールアーチ付近で微妙に波打つボディーサイドのキャラクターラインもまったく同様。つまり、A5スポーツバックを手に入れるのは、走る芸術作品を自分のものにするのと同じくらい価値があるといっても過言ではないのだ。
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スタイリングと使い勝手を高次元で両立
もっとも、自動車はただ眺めて美しければそれでいいというものとは限らない。もしも日常のアシとして使うのであれば実用性、機能性も無視できない。では、A5スポーツバックの実用性、すなわち室内のスペースユーティリティーはいかがなものなのか?
ルーフラインが滑らかに下がっていくファストバックスタイルの場合、後席のスペースは窮屈なものになるというのがこれまでの常識。ところがA5スポーツバックの場合、身長172cmの私が運転席を調節した状態でそのまま後席に回り込んでも、頭上には5cmほど、ひざ周りには20cmほどの空間が残る。同じクラスのセダンと比較しても遜色のない広さだ。
しかも、A5スポーツバックの後席は、背筋をピンと伸ばしたときの着座姿勢に近い形に背もたれの角度が設定されている。実は、背もたれをもっと後ろに強く倒したほうが頭上のスペースを稼ぎ出すには有利なこともあるのだが、そうなると乗員は大きくふんぞり返る体勢となって、長距離走行ではむしろ腰に負担がかかることになりかねない。しかし、アウディはそんな小細工をすることなく、人間工学に基づいた着座姿勢のまま十分なヘッドルームも確保している。つまり、美しさだけを優先して室内空間を犠牲にするのではなく、スタイリングとスペースユーティリティーを極めて高い次元で両立させたデザインなのである。
いっぽう、前席の乗員が相対することになるダッシュボードは天地にやや浅い薄めの造形とし、そこに水平方向に長く伸びるエアコンのアウトレットと化粧板を設けている。そのシンプルなデザインは室内の広さを強調するとともに、自然とドライビングに集中したくなる環境を作り出している。それはいかにも、速度無制限区間がいまだに残るアウトバーンで鍛えられたドイツ車らしい造形といえる。
さらに、運転操作に必要な情報はアウディバーチャルコックピットと呼ばれるフルデジタルのメーターパネルにコンパクトにまとめて表示され、高速運転中の視線移動を最小限にとどめてくれる。そして座り心地がやや硬めのシートはロングドライブでも疲れにくいだけでなく、長年にわたって使い続けても型崩れしにくいようしっかりと作り込まれている。ドイツ車のよき伝統は、こうした細部にも息づいているのだ。
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走れと誘う2リッターターボ
では、A5スポーツバックの走りはどうなのか?
今回、試乗したのは「2.0 TFSIクワトロ スポーツ」と呼ばれる上級グレード。ラインナップ的には、この上に3リッターV6ターボエンジンを搭載した「S5スポーツバック」が存在するが、354psもの大パワーを生み出すこちらは別シリーズといってもおかしくないハイパフォーマンスバージョン。A5としては、この2.0 TFSIクワトロ スポーツが実質的な最上級モデルといっても差し支えない。
その心臓部は、モデル名にもあるとおり排気量2リッターの直4ターボエンジン。直噴ガソリンターボエンジン(TFSI)の開発に長い歴史を有するアウディだけあって、完成度は極めて高い。まず、驚かされるのがエンジンレスポンスの鋭さで、ターボエンジンの欠点とされるレスポンスの遅れ(いわゆるターボラグ)が感じられないばかりか、スロットルペダルを踏み込んだ直後のトルクの立ち上がり方でいえば自然吸気エンジンさえ上回る鋭敏な反応を示す。また、スロットルペダルの踏み込み量に対してリニアにパワーが生み出されるのでドライバビリティーも良好。しかも6800rpmから始まるレッドゾーンまでよどむことなくエンジン回転数は上昇していく。その扱いやすさとパワフルな吹け上がり方は、多くのスポーツドライビング好きを納得させることだろう。
このシャープな印象のエンジンと組み合わされるのが、アウディ自慢のデュアルクラッチ式トランスミッション(DCT)、Sトロニックである。いまでこそスーパースポーツカー界のデファクトスタンダードになった感のあるDCTだが、実は世界で初めて量産車に採用したのはアウディ。DCTといえば電光石火のギアチェンジを極めてスムーズに行う“魔法のギアボックス”として知られているけれど、中でもSトロニックはシフトに要する時間が恐ろしく短く、たとえばシフトアップするときなどはタコメーターの針が自由落下していくかのようにストンと落ちる。それだけにレスポンスがシャープなTFSIとの相性は抜群で、市街地からワインディングロードまでどんなシチュエーションでも小気味いい走りが楽しめるはずだ。
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我慢知らずの万能シャシー
シャシーの仕上がりも上々だった。
前後の車軸を機械的に連結したフルタイム4WDシステムは、まれにコーナー初期の軽いアンダーステアを指摘されることもあるが、最新のアウディクワトロに限っていえば明確に意識されるターンインの遅れもなく、安定感が高いスムーズなコーナリングを楽しめる。さらに、コーナーの出口に向けてスロットルペダルを踏み込んでいくと、荷重がしっかりとかかったアウト側の前後輪に駆動力がかかり、まるでコーナーの曲率に沿って後ろから力強く押し出されるようにして加速していく。しかも、すべてのタイミングが完璧にあえば、コーナーからの立ち上がりでは後輪駆動車のようにステアリングを徐々に中立位置に戻したくなるくらい、そのハンドリングは痛快でスポーティーだ。
乗り心地も快適と評価できる。試乗車にオプション装着されていたスポーツパッケージの「Sライン」といえば、従来は偏平タイヤの影響で路面からゴツゴツとしたショックを伝えがちだったが、最近はこの点でも長足の進歩を遂げており、スポーティーな外観の代償として快適性を諦める必要がほとんどなくなった。とりわけ、こちらもオプション設定されている可変減衰力ダンパーのダンピングコントロール付きスポーツサスペンションを装着すると、サスペンションの動きがより上質になることが多いのでお勧め。試乗車の乗り心地が快適だったのも、このオプションが装備されていた恩恵だったかもしれない。
スタイリングが美しく、優れた実用性を誇り、上質な乗り心地とスポーティーな走りが堪能できるA5スポーツバック。そんな全方位的なポテンシャルの高さを、これ見よがしのデザインで主張することのない点が、私がA5スポーツバックに惹(ひ)かれるもうひとつの理由でもある。
(文=大谷達也<Little Wing>/写真=郡大二郎/撮影協力=静岡県富士水泳場)
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車両データ
アウディA5スポーツバック2.0 TFSIクワトロ スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4750×1845×1390mm
ホイールベース:2825mm
車重:1610kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:252ps(185kW)/5000-6000rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgm)/1600-4500rpm
タイヤ:(前)245/40R18 93Y/(後)245/40R18 93Y(ピレリ・チントゥラートP7)
燃費:16.5km/リッター(JC08モード)
価格:686万円/テスト車=811万5000円
オプション装備:オプションカラー<マタドールレッドメタリック>(8万5000円)/セーフティパッケージ<パークアシスト、プレセンスリア、サラウンドビューカメラ、サイドアシスト、リアサイドエアバッグ、コントロールコード>(21万円)/S lineパッケージ<S lineバンパー、ドアシルトリムS lineロゴ、S lineエクステリアロゴ、ヘッドライニング ブラック、デコラティブパネル マットブラッシュトアルミニウム、アルミホイール 5ツインスポークスターデザイン 8.5J×18、スプリントクロス/レザーS lineロゴ、マトリックスLEDヘッドライト、LEDリアコンビネーションライト、ヘッドライトウオッシャー>(44万円)/ダンピングコントロール付きスポーツサスペンション(14万円)/バーチャルコックピット(7万円)/Bang & Olufsen 3Dアドバンストサウンドシステム(17万円)/ヘッドアップディスプレイ(14万円)