日本の印象が変わりつつある

ボクは、1990年代末にイタリアに住み始めて間もないころ、イタリア人が経営する料理教室で広報兼通訳をしていた時期がある。

その流れで、寿司講座の企画も手伝ったことがあった。当時はまだ、イタリアで寿司レストランが珍しかったこともあってかなりウケた。だが、せっかく苦労して調達した海苔(のり)を、食べるときに気味悪がられてはがされてしまったこともあった。そんな思い出も、寿司がイタリアで一般的になった今となっては、昔話である。

寿司レストランやスーパーで観察するところ、こうした欧州の寿司ブームを支えているのは、主にミレニアルといわれる1980~2000年代に生まれた世代である。彼らは日本カルチャーへの抵抗がない。上映開始されたばかりの新作和製アニメを見ながら育った、ひとつ上の世代もしかり。

冒頭の日本車人気も、よく売れている車種からして、日本の事物に対する抵抗がない、そうした年代が支えるようになっているとみられる。寿司のバイラルな普及は日本愛好ムードをさらに熟成させ、間接的に日本車の販売も後押ししているに違いないのである。

気がつけば、「日本=模倣大国」という先入観から「スバルの水平対向4気筒やインボードブレーキは、アルファ・ロメオの模倣だ」などと、時間の流れすら無視した発言をする高齢者にも会わなくなった。

代わりに、折からの日本観光ブームで、「東京と京都、それから飛騨高山にも行ったよ」などと、自身の日本体験を会話のいとぐちにしてくるヨーロッパの人々が増えた。

勢いにのって、「東京で乗った『クラウン コンフォート』が欲しい」などと無理難題を言う日本ファンが出現するのではないかと、戦々恐々としている今日このごろである。

(文と写真=大矢アキオ<Akio Lorenzo OYA>/編集=関 顕也)

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大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト。国立音楽大学ヴァイオリン専攻卒にして、二玄社『SUPER CG』元編集記者、そしてイタリア在住21年と脈絡なき人生を歩んできたものの、おかげで妙に顔が広い。今日、日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして執筆活動に携わると共に、NHKラジオフランス語テキストでも活躍中。10年以上にわたるNHK『ラジオ深夜便』レギュラーリポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも奮闘している。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『カンティーナを巡る冒険旅行』『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(ともに光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)など数々の著書・訳書あり。

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