クルマへの展開も期待
サポートメンバーが選出した匠以外に、記者が特に注目した匠を紹介したい。
まずは、高知県代表の組子細工職人、岩本大輔さんだ。組子細工とは、釘(くぎ)を使わず、細かな木片を組み合わせて連続した幾何学模様を表現する、日本古来の伝統技術だ。障子や欄間、衝立(ついたて)などの建具に施される。
岩本さんは、その組子と樹脂を組み合わせることで強度や耐久性を備えた新たなハイブリッド素材を作り出し、その一部を使用した木製のバッグやカードケースなどを制作している。
「実家が建具屋で、僕は3代目にあたります。組子は、建具の最高峰の技術ですが、高価なため近年ではあまり使わなくなりつつあります。そこでもっとたくさんの人たちが手にしやすい身近なアイテムとして、今はファッション系の作品も手がけるようになりました。この新素材の開発により、曲面成形や自由な造形加工が可能になりました。今後は、インテリア、ファッション分野以外でも利用できる可能性を秘めているのではないかと期待しています」
大分県代表の竹藝家、麻生あかりさんが手がけるのは竹のアクセサリーだ。別府の伝統的工芸品である竹細工を教える学校で2年間竹工芸について学んだ。
室町時代に行商用の籠が作られたことが始まりとされる別府竹細工には、高度な“編組”技術が用いられ、美術工芸の道を切り開いたという歴史がある。
「生活用品を作る人が多い中で、新しいジャンルを開拓していきたいと思い、竹のアクセサリーブランドを立ち上げました。身に着けるものなので、重たいものは疲れてしまいますが、竹細工は軽いので、身に着けていても心地いいんですよ。これからもっとその良さが広がっていけば良いと思います」。
クルマ業界に目を向けると、今後は自動運転技術の進化にともない、インテリアデザインも大きく変化する可能性がある。自分で運転する必要がなくなれば、ステアリングやペダルは必要なくなるからだ。
岩本さんの手がけた組子は、透過性も高く、インパネやドアトリム、メーターまわりの部材として大きな可能性を感じさせる。
また、麻生さんの手がける竹細工の中には、アクリル樹脂と組み合わせたブートニエールも展示されていたが、竹とほかの素材を組み合わせることによって、クルマのインテリアのなかでもその魅力が生きてくるのではないか。
共に耐久性という点では検証が必要だが、今後のカーデザインを考えるうえでのヒントが隠されている。
今回のイベントでは「BEAMS JAPAN」とのコラボ企画が発表されたほか、来年度もこのプロジェクトが継続される、というニュースも飛び出した。500人で作る1台のレクサス、というのも夢ではないかもしれない。
(文と写真=スーザン史子)
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