ドライバーは認知症
運転するのはジョンだから、子供たちは気が気ではないのだ。日本でも老人が高速道路を逆走したり、ブレーキとアクセルを踏み間違えてコンビニに突っ込んだりする事故が相次ぎ、免許証自主返納が奨励されている。幸い記憶力が低下しても運転は身体が覚えているようで、ジョンは手慣れた様子でドライブを続けた。街では選挙カーとすれ違う場面が多い。トランプが大キャンペーンを張っているのだ。これは、2016年夏の物語である。
バージニア州に入り、チェサピークの歴史村を訪れる。偶然出会ったのは、教師時代の教え子だ。ジョンは急に覚醒して記憶を取り戻し、思い出話を始める。頭はさえわたり、知的な会話を交わす姿は別人のようだ。ジョンはいわゆる“まだらボケ”状態なのだろう。少し良くなったかと思うともとに戻るという繰り返しで、この時も数分後には自分が誰と話していたのかも覚えていなかった。
夜はオートキャンプ場で宿泊する。隣の場所の家族から「いいクルマですね!」と声をかけられていたから、レジャーシーカーは古くても憧れのキャンピングカーなのだ。食事が終わると、外でウイスキーを飲みながらスライドショーを楽しむ。映し出されるのは、思い出の写真だ。2人がまだ若く子供たちが小さかった頃の姿が次々に現れる。楽しかった出来事を語り合ううちに、ジョンの記憶は混乱し始めた。現在と過去が入り交じり、現実の自分がどの時点にいるのかが判然としない。
ガソリンスタンドで給油中にエラが電話をかけていると、ジョンは1人で出発してしまう。意地悪をしているのではなく、忘れてしまったのだ。運転しながらコーラの栓を開けていて蛇行運転すると、パトカーに停車を命じられる。エラは気の休まる時がない。

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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