老いることの素晴らしさと深刻さ

美少女アイドルとイケメンの学園恋愛モノばかりが並ぶ日本映画のラインナップを見ていると悲しくなってしまうが、実は老人映画の良作も公開されている。2017年の『人生フルーツ』は、愛知県の高蔵寺ニュータウンに住む90歳と87歳の老夫婦の暮らしを描いたドキュメンタリー。夫はこの地域の宅地開発を担当した建築家である。妻は家の敷地で育てた野菜と木に実った果実を使っておいしい料理を作る。生活そのものが、2人が丹精を込めた作物なのだ。

2016年に公開された韓国映画『あなた、その川を渡らないで』は、98歳の夫と89歳の妻の田舎暮らしに密着した。家のまわりを掃除しながらふざけ合い、街に行く時はおそろいの服を着て出掛ける。手をつないで歩く姿がなんともかわいらしい。どちらの作品も、こんなおじいちゃん、おばあちゃんになりたいと思わせてくれた。

残念ながら、老いるということは素晴らしい面ばかりではない。『ロング,ロングバケーション』では、誰もが直面しなければならない深刻な現実がテーマとなっている。西部 邁のような知性ですら避けることのできなかった、重い問いが残された。フロリダの陽光の下で、長い休暇が終わる。悲しい結末は、同時に救済でもある。

ナンバーワンMILFのヘレン・ミレンだから、ちゃんとサービスシーンも用意されている。2005年の『サイレンサー』でのキューバ・グッデン・ジュニアとの激しい行為にも驚いたが、今度はお相手がおじいちゃんなのだ。アカデミー賞女優の演技に懸ける覚悟には感服せざるを得ない。

(文=鈴木真人)

© 2017 Indiana Production S.P.A.
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『ロング,ロングバケーション』 
2018年1月26日(金)TOHOシネマズ 日本橋他全国順次ロードショー
配給:ギャガ
『ロング,ロングバケーション』 
	2018年1月26日(金)TOHOシネマズ 日本橋他全国順次ロードショー
	配給:ギャガ拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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