人生観が関わる話

イタリアでは、外国に倣ってにぎにぎしく新しいシステムやモノを導入しても、なかなかうまくいかないことが多々ある。

その理由としては、労働組合が強いことや、長年にわたる労働と生活に対するイメージが挙げられる。冒頭の配送センターでの論議は、まさにそれによるものだ。彼らの中の優先順位は、ときとしてグローバル企業が決めたスタンダードを超越するときがある。

冒頭にも記した「私たちはロボットではない」という彼らの言葉から察することができるように、このあたりは人生観も関わってくる問題であり、日本や米国の労働観と一概に比較することはできない。

そんな中、2018年3月にはイタリアでは総選挙が実施される。政治家や労働組合がパフォーマンスとして、郷土愛の強いイタリア人を相手に自らがグローバル企業と対峙(たいじ)する姿をアピールしているようにも筆者の目には映る。

もうひとつ、こうしたシステムがイタリアでうまくいかない理由は「メンテナンスが行き届かないこと」である。アマゾンロッカーだけでなく、パーキングチケット発券機、駅の自動券売機、車いす用リフト、電気自動車の充電ポール……とせっかく最新の設備が設置されていても、壊れていることが多い。

ついでに今回思ったのは、「もしコンビニエンスストアがあれば、受け取りにこんな苦労することはなかろうに」ということである。そう、イタリアには日本のようなコンビニが無いのだ。

だから東京に行って、ほぼすべてが快適かつ正確に進行していく生活や、それを街角で支えるコンビニの便利さにどっぷり漬かったあと、次に何が起こるか予想もできなければコンビニもないイタリアに戻ると、クルマに乗っていて急ブレーキを踏まれたような感覚に襲われる。再びそのような暮らしに慣れるまでには、日本に滞在したのと同じだけの期間を要するのだ。

こちらはシエナのEV用充電ポール。先進的な施設であるにも関わらず、これまた「給電中止」の貼り紙が。2015年6月撮影。
こちらはシエナのEV用充電ポール。先進的な施設であるにも関わらず、これまた「給電中止」の貼り紙が。2015年6月撮影。拡大
パリの地下鉄駅で。壊れた自動改札口。
パリの地下鉄駅で。壊れた自動改札口。拡大
大矢 アキオ

大矢 アキオ

コラムニスト/イタリア文化コメンテーター。音大でヴァイオリンを専攻、大学院で芸術学を修める。1996年からシエナ在住。日本を代表するイタリア文化コメンテーターとして語学テキストやデザイン誌等に執筆活動を展開。19年にわたるNHK『ラジオ深夜便』リポーター、FM横浜『ザ・モーターウィークリー』季節ゲストなど、ラジオでも怪気炎をあげている。『Hotするイタリア』『イタリア発シアワセの秘密 ― 笑って! 愛して! トスカーナの平日』(ともに二玄社)、『ザ・スピリット・オブ・ランボルギーニ』(光人社)、電子書籍『イタリア式クルマ生活術』(NRMパブリッシング)、『メトロとトランでパリめぐり】(コスミック出版)など著書・訳書多数。YouTube『大矢アキオのイタリアチャンネル』ではイタリアならではの面白ご当地産品を紹介中。

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